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フェスタの冒険 森

 ゲント西方の森に着いたのは昼を過ぎてからである。

 到着までの道中に魔物と遭遇することも無く、この事から森の中に魔物が発生している原因は森のどこかに瘴気異常が発生しているのではないか、と推察される。

 地域の瘴気が濃くなって魔物が発生したのならば、森に近付いた時点で何らかの魔物とは遭遇したであろう、というのがジバがフェスタたちに語った予測である。

 外側から見た森の全景は、周囲がほぼ円形で直径は目測で凡そ五、六平方キロメートルといったところだろうか。

 無理のないペースで探索すれば、二日もあれば森の中を捜索しながら踏破できそうな広さできある。


「では、行きましょう」


 フェスタの言葉に、残りの二人が頷く。

 非効率的であることは承知の上で、三人で一緒に行動することにした一行である。

 普通であればこういった森林の探索の場合、互いにあまり距離を取らずの二人一組程度で別れて行動する。

 別れて行動しながら何かを発見した場合に何らかの合図を送り集合し直すことで捜索範囲を広げるのだが、生憎フェスタたちは三人パーティーである。別れて行動するとなれば必然的に誰かが一人で行動することになってしまう為、時間効率よりも安全性重視で全員で一緒に行動することに決めたのだ。


 森の中は所々に陽の光が差し込み、瘴気の気配もさほど濃くは無い。

 事前の情報が無ければ魔物が出没するような森とはとても思えない。

 しかし、油断は禁物と言い聞かせながた慎重に進む。


 隊列は先頭をフェスタ、真ん中にアリサ、後方にジバという順で組んでいる。

 本来なら武闘家であるアリサが先頭になるのがセオリーだが、今回に限っては探索の練習と優先的に戦闘しやすいように、という理由でフェスタが先頭に立っている。


「静かなものですね……」


 しばらく歩いてみても、何も現れない森に関しての感想をフェスタが漏らす。


「確かに……静かだね」


 フェスタにそう返すものの、アリサは何か違和感のようなものを感じていた。

 アリサはこれまでの冒険で何度か森に入ってはいるのだが、今回はいつもと何かが違う。

 その違いが何かははっきりと自覚できていないが、何か明らかに違和感を感じていたのである。


「ええ、静か過ぎます」


 違和感の正体を口にしたのはジバである。


「この森、魔物どころか野生の生き物すら出て来ませんね。先ほどからどれだけ歩いても、動物はおろか虫すら一匹も見かけません」

「それだ、さっきから鳥の鳴き声すら聴こえない!」


 ジバの言葉に合意を示すアリサ、違和感の正体に気が付いた途端に、自分が居るこの場所が非常に薄気味悪いものに感じてきた。

 虫も鳥も、動物も居ないのに青々と繁る木々が作り物のように見えてきた。


「それと、奥の方から微かに瘴気のようなものを感じます、気を付けて進みましょう」


 ジバの言葉に頷き、一行が再度森の奥に進もうとした、その時ーー「うわっ!」というアリサの声が森の中に響く、フェスタはその声に反応して振り返ったが、背後にアリサの姿は無い。


「アッチです!」


 ジバの指差す方を見ると、アリサが木の枝に身体を巻き取られ、宙に浮いている姿が見える。

 そして、枝から幹に視線を移すとーーそこには人の顔のようなものが浮き出ていた。


樹木人(トリエント)ですね……」


 ジバはその魔物の名前を口にする。

 樹木人(トリエント)は、主に瘴気の濃い森に生息する魔物だ。

 自身に近付く生き物を枝や根を使って幹に取り込み、精気を奪って殺してしまう魔物である。


「こんな場所に居るような魔物なんですか?」


 フェスタが剣を構えながらジバに聞く。

 初めて見る魔物だが、城にあった図鑑を読んでいたので名前とどのような生態の魔物かというのは知っている。

 知っているが、図鑑に載っていた限りの知識では樹木人(トリエント)はもっと瘴気の濃い、光すら差し込まないような深い森にしか出没しないはずの魔物であるはずだった。


「私も、こんな小さな森で見たのは初めてです。しかし、今はとりあえずーー」


 フェスタに一瞬だけ視線を向けて合図を送る。

 それに小さく顎を引く程度の頷き加減で返事をするフェスタ。


「はい! 早くアリサさんを助けましょう!」

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