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フェスタの冒険 武器

 防具を買うだけで驚愕していたアリサに続き、今度はフェスタが驚愕する羽目になった。

 武器の金額とかチャチな問題じゃあない。もっと恐ろしいものの片鱗を味合ったのだ。

 それはジバが何気なく漏らした一言が切っ掛けであった。


「さてと、サイズの調整をしてもらっている間に武器を見に行きましょうか。武道家用でしたよねーー」


 ここで気が付くフェスタも迂闊だったが、仲間にまでしておいてこんな事も確認していなかったのも問題なのだが。

 フェスタはアリサの職種を知らなかった。

 理由は簡単なものだ。非常に単純な理由ーー『アリサから聞いていなかった』からである。

 昨夜の話の中で何となく前衛職のどれかだろう、とは薄々考えていたが具体的には何も聞いていない。

 昨夜だけに限らず、ジバと合流して以降ずっと聞いていない。


 なのに、どうしてジバは断言できたのか?


 ジバとアリサが二人だけで話していたような時間は全く無かったし、武器屋に来てからもそんな機会は無かったとフェスタは断言できる。

 ずっと三人でいたのだから、どこかでアリサが話していたのならフェスタも知っているはずなのだ。


「え? アリサさんって武道家なの? って、ジバさんは何でそれを知ってるの?」


 疑問は素直にフェスタの口から出た。

 アリサは疑問にも感じていなかったようで、フェスタの言葉に「そういえば……」と今になって首を傾げる。


「ああ、解析(アナリシス)を使わせて頂きました」


 それが何か? とでも言いたげにジバは答えた。


(ええ? 解析(アナリシス)って人にも使えるの? てか、いつ使ったの? ひょっとして私も使われてる?)


 フェスタ は 混乱している。

 ジバ は 不気味に笑っている。


 本家RPGのウィンドウ風に現状を表記するとこのような感じの光景である。

 なお、アリサは既に話題に着いて行けていない、置き去りである。

 現状を打ち破ったのは、店員の「では武器売り場へご案内致します」の一言であった。


 ジバを問い詰めるのは後回しだ、とフェスタも気持ちを切り替える。

 武器売り場は店の奥側にあって、ショーウィンドウの中にはひょっとして伝説級なんじゃなかろうかと思うほど煌びやかな武具の数々が並べられている。

 そんな光景にジバは見慣れているような姿を、フェスタは『宝物庫にも似たようなの置いてあったなー』とのん気な感想を、アリサは初めて見るような光景にガクガクブルブルと、三者三様の反応を示している。


「武闘家用ですと、こちらがお薦めとなっております」


 カウンター上に三つほど武闘家向けの武器が置かれる。

 一つは銀色の金属でできた爪状の武器、一つは同じく銀色の金属でできた拳に付ける形になっている手甲、一つは先に棘が付いたヌンチャクだ。

 どれもこれも、これでもかという高級感に溢れているのが共通点だ。

 アリサの目が虚ろになり「ここは別世界、ここは別世界……」とブツブツ呟いている。


「うーん、どれにする?」


 アリサの様子を見ていないのか、あえて無視しているのか。フェスタがアリサに尋ねる。

 フェスタの言葉にハッと正気を取り戻したアリサであったが、目の前の武器はどれも甲乙つけ難い。

 というか、アリサにとってはどれも雲の上の存在のような武器ばかりで、どれが良いかと言われても全部良いね、としか言えない。

 だが、素直の全部良いなどと言った日には、このアリサと金銭感覚の違いそうな二人が「じゃあ全部ください」などと言いかねないのが怖くておくびにも出せない。

 アリサは自身の妥協点とも言える質問を店員にすることにした。


「こ、この中で一番安いのドレデスカ?」


 一番安いものでも先ほどの防具一式と似たような値段であろうことは覚悟している。

 武器の相場とは一般的に見てもそんなものだからだ。

 これは、防具だとどうしてもサイズが違うと身に付けられないが、武器であれば多少のサイズ違いは使い方次第でカバーできるという理由と、その考えてが基となった武器防具を下取りに出す時の買取価格からの流れだ。

 同じグレードの武器と防具だと、防具一式が大体武器と同じぐらいの金額と釣り合ってしまう。


「そうでございますね、こちらの手甲がお求め易くなってございまして。ミスリル製で白金貨一枚と大金貨三枚となっております」


 アリサのやや失礼な質問にも恭しく店員が答えてくる。

 予想よりかはやや安いが、それでも目玉の飛び出るような値段に違いない。

 今回こそはもっと安い武器にしておこう、ジバがさらっと高額を払ってしまう前に品物を変えてもらおう。

 アリサがそんな事を考えながら口を開く前に、今度はフェスタが、


「あ、お買い得ですね、これはとりあえず買っておいちゃいましょう」


 と、カウンターに白金貨を二枚置きながら、店員に向かって「あ、お釣り下さい」などと言っている。

 こんな高級な武器防具を依頼金として買われてしまって、この先どれだけ働けばこれらの金額に届くのだろうか、と気が遠くなりそうなアリサであった。

 さらには店員からお釣りを受け取りながらフェスタが、


「他の二つどうしましょうか? 気に入ったのあったら言って下さい、買っておいちゃいましょう」


 とフェスタが言い出し、ヘタリ込みながら「勘弁してくだだい」というのが精一杯なアリサだった。

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