フェスタの冒険 トイレ前
『ギルド総本部にある五階迷宮、その難解さについには立ち止まり、地に屈したフェスタ。
フェスタが再び立ち上がれる日はやって来るのか?
倒れたフェスタをさらなる精神攻撃が襲う、以下次号に続く!』
そんな馬鹿丸出しの思考をしながら、フェスタはトイレ前の座り込んでいた。
ミニスカートなのに淑女の嗜みなんてものを忘れてしまったような座り方をしているため正面に周って見れば白いパンツが丸見え状態になってしまっているのも馬鹿っぽさに磨きをかけている。
ここであえて忠告すれば、フェスタはまだ十一歳だ、そこに興奮を覚えてしまうような人物は
現実世界なら「お巡りさん、コイツです」だし、ワーラット界でも「衛兵さん、コイツです」となってしまう。
紳士諸兄には十分に留意して頂きたい所存だ。
(どうしたもんですかねえ……)
馬鹿な考えで時間を潰すにも限度はある。
トイレの前で待っていれば、いずれは誰かが入りに来るであろう。
そうなれば、その人に道を聞けば魔法装備鑑定課の場所を、悪くとも階段の場所ぐらいは聞けるだろうと目論んでみたもののーー運が悪いのか、そんな時に限って誰もトイレにやって来ない。
フェスタが知らなくて当然なのだが、このギルド総本部の五階に勤めている職員の数はさほど多くない。
職務内容によって細分化された部屋が約四十ほどこの階にはあって、職員は各部屋につき一人から二人程度。ほとんどは一人部屋状態になっている課ばかりのやたらと専門性の高い部署がこの階に集中している。
さらに、それだけ人数が少ないのにも関わらず、この階にはトイレが四つも存在している。
ただでさえ迷路のような造りになっているのでトイレの数が少ないと下手すれば漏らしてしまう人も居るかもしれない、という配慮だ。
故に、この階の職員は自室から近いトイレに必然的に入り、自室から遠い場所ともなれば通り掛かることさえ滅多に無い。
ほぼ全ての職員が覚えているのは自室から階段までのルートと、自室から最寄りトイレまでのルートだけなのだ。
この階層を自由自在に動き回ることが出来るのは掃除のオバちゃんだけである、ということはギルド総本部内の公然の秘密である。
それを知る由もないフェスタは待てども来ない何者かをひたすら待ち続けるのであった。
なぜ待つのか? それは立派な迷い子だからだ。
下手に動き回った結果が現在の惨状の結果であり、これ以上動き回っても状況を打破できる見込みがない。
そういった消極的な理由でフェスタはトイレ前を根拠地として待ち続けることに決めたのだ。
(どれだけ待てば人がくるでしょうか……せめて、衛兵さんでも見回りにきてくれたら良いんですけど)
ちなみに、ギルド総本部内に衛兵は居ない。
何せ職員は全員が元冒険者もしきは現役の冒険者だ。腕っ節には自信のある者ばかりなので『自分の身は自分で守れ』が徹底されている。掃除のオバちゃんでさえも地元ではちょっと名の知れた魔術師だったりする。
そんな兵の集まりがギルド総本部というものなのである。
フェスタが迷い、こうしてトイレ前で待ち続ける間、時間は既に一時間を超えている。
これ以上ここで待ち続けるか否かーーフェスタに悩みが生じ始めた、そんな頃合いである。
ーーコツ、コツ、コツ。
フェスタの耳には福音にも聞こえそうな足音がトイレ前に響いた。
紳士向け情報:フェスタのパンツはシルク製です。一丁前に。
子供ですが王女様なので、一応。