表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/114

フェスタの冒険 迷路

「こ、この鎧が所縁の品……なん……ですけど」


 ゴメスに自分の着けている胸当て鎧(ブレストアーマー)を指し示してみせるフェスタ。

 当然の如く確証も無いので自信もない。ついでに言えば隠すほどの胸も無い、全く関係ないが。

 ゴメスは鎧を見ながら小さく「ふむ」と言ってからフェスタに視線を向けてこう言った。


「すまねえが、俺じゃあちょっとそれが本物かどうか鑑定できねえ、カードに勇者候補の刻印は先に入れといてやるからよ。悪いが五階にある魔法装備(マジックアイテム)の鑑定課に行って鑑定書だけ出しておいてもらえねえかな?」


 と言いながらフェスタにカードを返してくる。戻ったカードを見ると、カードの左隅に五芒星のようなマークが刻印されていた。


「一応、決まりでな。冒険者ギルドとして勇者候補に認定するのに証明は必要になっちまうんだ。お役所仕事だとはこっちも思っちゃいるんだが、何せ上が決めたことだから逆らえなくてよ」


 頭の後ろをポリポリと掻きながら、ゴメスが「すまねえな」と小さく付け加える。


「あ、あのお……仲間募集の登録はどうなんでしょ?」


 当初の目的が何も果たされていないのに次の行動を指示されてしまい、不安になってしまったフェスタがゴメスに尋ねる。


「ああ、こっちで作って二階の掲示板に貼り出しておいてやるよ。『勇者候補』の魔王討伐パーティーのメンバー募集なるべくベテランを求む、ってな感じで良いんだろ?」


 なるほど、ゴメスは頼りのなる仕事ができる男のようである。

 心の中で『ウホスみたいとか思ってごめんなさい』と謝るフェスタ。

 ちなみに、ウホスとはゴリラに非常によく似た生物である。人を襲う性質は持っていないので魔物認定はされていないワーラット界にある動物園でも割とおなじみのメジャーな生き物だ。

 ゴリラ、ではなくゴメスに「お願いいたします」とペコリとお辞儀をするフェスタ。

 良いってことよ、と手をヒラヒラさせて応えるゴメスであった。


 鑑定課の場所は五階に上がって、上がったところから右手に曲がって三つ目の角を左に曲がってから突き当たりを右に曲がって、そこから四つ目の部屋。

 そうゴメスに教えられたフェスタであったがーー見事に迷った。

 どこで道を間違えたのか、一向に魔法装備(マジックアイテム)鑑定課の部屋が見当たらない。

 それどころか現在位置も分からなくなってしまっている有様だった。


 これは、ただ単にフェスタが方向音痴だからというのが理由ではない。

 このギルド総本部の五階以上の階はほぼ全てが極めて機密性の高い部署ばかりで成り立っている。

 その為に機密を奪おうとする侵入者対策としてあえて迷路にも似た造りとなっているのだ。


「ここ……どこですかぁ?」


 そんな事情は露知らず、フェスタは盛大に迷子となりギルド総本部の五階を彷徨い歩いていた。

 もう一度元の位置に戻って道を辿り直すにも、元の道に戻ることさえままならない。そんな状況だ。

 これは鎧が本物かどうか分からないのに所縁の品だと嘘を吐いてしまったバチだろうか、なんて事を思いながらも歩き続けるフェスタ。

 しかし、歩けども歩けども目的の部屋である魔法装備(マジックアイテム)鑑定課も自分が上がってきた階段も、どちらも見付からない。

 迷い始めて二十分が過ぎる頃には、体力ではなく精神的なものがヘトヘトになってしまっていた。


 一応、このギルド総本部の五階には転送陣などの罠は仕掛けられてはいない。なので、もしフェスタが『左手の法則』などを使っていれば上がってきた階段ぐらいならばいずれは辿り着けたのであろうが、残念ながらフェスタはそこには思い至らず、その後もしばらく迷い続けることになった。


 宛て処もなく歩き続けて疲れ果ててしまい、遂にはトイレマークのある壁の前でへたり込んでしまうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ