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フェスタの冒険 宿屋

 フェスタが目覚めた時には既に太陽は高く、残念ながらフェスタは宿屋の朝ご飯にありつくことができなかった。


 この日のフェスタの予定としては、宿屋で朝ご飯を食べたら冒険者ギルドに赴き、旅の仲間を見付けてからその仲間と今後の方針を決めて、方針次第では王都を出て別の街を目指すつもりであったのだ。

 計画自体は割と雑でまさに『獲らぬ狸の何とやら』というものではあったが、いきなり計画の第一歩から躓いてしまった。

 いきなり日頃の生活管理をいかに侍女のメリーに依存していたかを思い知らされ、前途多難な予感からわざわざ起こしに来てくれた宿屋の娘さんの目の前で起き抜けから大きな溜め息を吐くところを見せつけてしまう。

 フェスタよりも小さな宿屋の娘は、そんなフェスタを見てクスクスと笑い「もうちょっとしたら食堂でお昼がはじまるよ」と教えてくれた。


 ワイズラット国では、というよりもワイズラット国があるワーラット大陸にある各国では、市民に時間を伝えるために鐘が鳴る。

 時計の魔道具が基本的に高価で一般市民には手が届きにくいというのが理由の一つだ。

 また、時刻を報せることにより、市民の生活様式がある程度の統制を取れることによって商業などを営む者が業務を効率化しやすいこともあって大抵の大きな町では商業組合(商業ギルド)がこの時報の鐘を受け持っていたりする。

 時報の鐘が鳴るのは、それぞれ四つ刻(午前8時)六つ刻(午後12時)八つ刻(午後4時)十半刻(午後9時)となっている。


 大抵の店では昼食を六つ刻前には提供をし始めるのでフェスタの場合は朝寝坊と呼ぶにはかなり時間を寝過ごしている。

 過ぎた失敗にクヨクヨしても仕方ないとフェスタは本日の予定を少し修正して、ここでお昼ご飯を食べてから冒険者ギルドへ行くことにした。


 この世界の宿屋は基本的にチェックアウトという概念は無い。

 泊まるときに予定を伝え、泊数と朝食や夕食の有無によって決められた金額を先払いをする。

 予定を過ぎたら追加料金を払うし、今回フェスタが泊まったような風呂が無いタイプの宿屋であれば湯の入ったオケとタオルを借りるのに別料金を即金で払ったりもする。

 フェスタが考える程度の時間までの部屋への滞在に追加料金は発生しないことがフェスタには分かっていたため、フェスタはこの部屋で荷物のチェックをしながら昼食までの時間を過ごすことに決めた。


 フェスタが持って来たのは宝物庫から持ち出した剣に胸当て鎧とデザインが気に入って持って来たブーツ、それに旅装用のマントと女冒険者には割と定番であるミニスカート状になった丈夫な布で作られている服。この辺りが装備品である。

 他に手荷物としてはナップザックのような荷物入れに入っているフェスタの貯めてあったお小遣いの入った財布、父王から貰った旅銀の入った麻袋、後は荷造りの時にメリーがくれた傷薬とフェスタの教育係兼政務顧問であったブラウマンが自身が冒険者であった頃に買って未だに持っていたままだったという、いつの時代に作られたのかさえ謎なマジックポーションが入っている。


 フェスタが宝物庫から持って来た装備類は基本的に軽いものばかりだ。

 一応、国宝っぽいものを勝手に持ち出しては悪いという思いからそれっぽくない、シンプルなものを持ち出して来たのだが装備してみてその軽さにフェスタも少し驚いたほどである。

 それはさて置き、これから長旅になるであろうし重い荷物は確実に旅の邪魔になる。

 故に、フェスタは荷物を軽く抑えていた。


 ちなみに、この辺りの冒険者としての知恵は教育係であったブラウマンから教わったものである。

 その昔、冒険者であったという彼は学術の講義の合間に様々な冒険譚や冒険者者の基礎知識のようなものを教えてくれており、おかげでフェスタは旅に出るのは初めてなのに知識だけに関してはベテランのように耳年増となってしまっている。

 この後に訪れる予定の冒険者ギルドで旅の仲間を募る、というのもブラウマンから教えられた知恵であったりする。


 こうして、フェスタが所持品のチェックを終える頃には、階下から何やら美味しそうな匂いが部屋まで漂ってくるのであった。

×マニュアル片手に異世界勇者

⚪︎フェスタ戦記


本当にごめんなさい

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