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フェスタ 三

 賢王の子孫である勇者を探す、魔王軍の猛攻に喘ぐ各国家には一大事となった。

 いかに大国の初代王とはいえ、およそ二百年以上前の人物である。

 その子孫ともなれば膨大な数となり、それを探し当てるのも一苦労なのだから。


 まず、残された文献から賢王ケン=イワオ=ワイズラットの子供は八人いたと判明する。

 だが、これは子供が八人だけで、そこから辿れば良いという話ではない。

 文献から探れるだけで見付かったのが八人というだけで、最低でも八人なのだ。

 記録には残らない隠し子がいる可能性や、八人の子供や孫、その子孫の中にも出奔してしまった人物や隠し子やら私生児を設けてしまった人物もいる。

 微に入り細を穿つように一人一人を見付けるのは、物理的に不可能というものだ。


 それでも国家の存亡に懸かる一大事なのだ、勇者を見つけ出さねば間違いなく国が、下手をすれば人類が魔王によって滅ぼされしまうほどの一大事なのである。

 各国の歴史家、密偵、果ては各地の寺院や衛兵までもを用いて大陸を挙げての大捜索が始まった。

 かくして、人類の存亡をも賭けた大捜索は一年以上にも及び、その間に見付かった賢王の子孫こと勇者候補は千七百八十二人にも上った。

 いかに人間と言えども、さすがに二百年の時が有れば子孫はネズミ算の如く増えるものである。


 その中には高齢のために凡そ戦いには向かない者、幼過ぎて戦いの場へ赴くには訓練さえままならぬ者、賢王に所縁(ゆかり)の品を所持しており賢王の子孫かもしれないがその確証を得られぬ者なども含まれた。

 だが、そういった明らかに『勇者に至るとは思えぬ者』を除いても軽く六百を越える勇者候補が残った。

 さらに言及するならば、時は魔王軍の猛攻に人類が曝されているという正に一刻を争う時勢である。

 発見され、戦いに赴ける年齢、能力を持った賢王の子孫たちはすぐさま魔王討伐の旅へと送り出された。

 要は、早く旅に出た者は神聖皇国より神託が下された一年前には既に旅へと出ていたのである。

 少しずつ増えていく勇者候補の旅立ちと、急ピッチで進められる勇者候補の捜索は同時進行で行われた。


 さて、妙齢で初代国王の血を引く子孫、となれば当然のことフェスティアも含まれた。

 正真正銘の王女であり、幼い頃からの鍛錬の甲斐があってか武芸も魔法も人並み以上に達者である。

 特に武芸一般、剣に関しては十一歳にして城内の騎士団と互角以上の腕前となっていた。

 女子とはいえ勇者候補の条件には当てはまり過ぎる程に当てはまっていた。

 実際に賢王の血を引く勇者候補としてフェスティアほど幼くないにせよ女性も発見されており、例外なく魔王討伐の旅へと出立していたのである。


 それにも関わらず、勇者候補捜索が始まってかた半年が経つ頃になってもフェスティアは城内に閉じ込められていた。

 その理由はーーフェスティアが王族の女子だから、というものである。

 確かに、各国の王族の中に賢王の血を引く者が居て、その者は国の要職ーー上は国王から下は宰相から商業組合(ギルド)の組合長の至るまで、その者が魔王討伐に旅立ちことにより大きな影響が出てしまうような人物は例え戦える可能性があっても魔王討伐の旅には出ていなかった。

 しかし、フェスティアはいかに王族、王女とはいえ王位継承権すら持たぬ要職にも就いてはいない。

 言ってしまえば、旅立ってしまって構わない。否、旅立つべき人物のはずなのだがーー王の反対により魔王討伐への旅立ちを禁じられてしまっていたのである。


 フェスティアは自身のこういった状況にーー非常に不満を抱えていた。

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