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フェスタ 一

 フェスタがうずくまって額を押さえている。

 押さえた手の下、額は真っ赤になっている、が涙目になりながらも自業自得は理解しているので文句は言わない。


 逆に、茉莉はデコピンをかました指を押さえてうずくまっている。

 自分で思っていたよりも会心の一撃が決まった、というのもあるがそれ以上にフェスタが石頭だったからである。

 互いに十秒ほどうずくまったままで声も出せずにひとしきり悶えた後、先に復活を遂げたのはフェスタだった。


「し、仕方ありません……全て正直にお話しさせて頂きます」


 おでこを撫りながら、指を撫りつつ涙目になっている茉莉に向かい真面目くさった顔でフェスタがそう話し出す。

 語尾にかなり小さな声で「いずれバレることですし……」と呟いたのを茉莉は聞き逃さなかったが、それはあえて見逃し、フェスタの話の続きを黙って待つ。


「まず、私の本当の名前は『フェスティア=エル=ワイズラット』といいます。『フェスタ・ホークレス』は偽名というか通り名と申しましょうか、ともかく通称のようなものなのです」


 このような語り口から始まったフェスタの『本当の話』とは、以下のようなものであった。


 フェスティア=エル=ワイズラットは地球とは違う次元に存在している大陸『ワーラット』にある王国『ワイズラット王国』の現王家に産まれた第三王女であった。

 八代目国王となる父と、正妃である母との間に産まれた第三子、それがフェスティアである。

 父王には他に二人の妃がおり、正妃を含めてその間に七人の子がいる。

 四人の王子と三人の王女、フェスティアは末っ子であり女児であることもあって最初から王位継承権を持っていなかった。

 とはいえ、フェスティアは末の妹として皆から可愛がられていた。

 また、その愛らしさから国民からも好かれており、王室のマスコットのような存在としての人気も高かった。


 いずれは政略結婚をするかもしれない身とあって、幼い頃から礼儀作法は教えられていたが、フェスティアは世間で呼ぶところの『お転婆』な少女であり、お花や服、人形といった女の子が好むようなものよりも剣技や魔法、乗馬や格闘術といった男がするようなものに強く興味を抱き、またそれらを積極的に学ぶような少女だった。

 とはいえ、周囲がそれを咎めることもなく、年頃ともなれば自ずと落ち着いて嫁入りに必要なことを学ぶだろう、と本人の望むような行動を取らせていた。


 フェスティアの奔放な日々が終わったのは賢王歴二一四年、フェスティアが十一歳になった年である。

 その日ワイズラット国の南の辺境の街より、一人の傷付いた伝令の兵士を乗せた馬が王城へ駆けてきた。

 危急の伝令ということで特別に王への目通りが許可され、大臣も並ぶ王への謁見の間で兵士が告げた重大な連絡ーーそれは「南のホーク大陸にて、彼の魔王が復活した」という衝撃的なものだった。


 急遽、王の命令の下に魔王の討伐軍が結成されることとなる。

 ワイズラット国のみならず周辺国家からも選りすぐりの兵や将たちが集められ、さしもの伝説に聞こえし魔王といえど生き残ることは叶うまい。そう誰もが思った。

 しかし、そんな希望は儚く散らされることとなる。


 討伐軍のホーク大陸への派兵からおよそ三か月、各国の王の元に届けられたのは『討伐軍の全滅』の報であった。

 這々の体で何とか生還してきた兵士や将らの口から出るのは「魔王には敵わない、魔王に逆らうな、人類は全滅しかない」という絶望的な言葉だけだった。

 この後、しばしの間ホーク大陸と領土を近くとする各国は魔王軍の魔物たちとの防衛戦に掛かり切りとなる、しかしながら人類は魔物に対し効果的な戦力を持たず人類の領域は魔王に着々と占領されていった。


 このまま人類は魔王に征服され、滅ぼされしまうのではないかーー誰しもが、そんな考えを抱きかけ始めた、そんな頃である。

 小国ながら神に仕えることを是とすることで各国への神殿との関わりかた絶大な権威を持つ国『エフィネス』から各国への吉報が届いた。

 曰く、「世界を救う、魔王を倒せし勇者が、すでにこの世に降誕している」という神託が下った、と。

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