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フェスタの冒険 謁見(公式)

 エフィネス神聖皇国を治めているの大神ネフィス神殿であり、大神ネフィス神殿のトップは教皇と呼ばれる。

 故に神聖『皇国』であり、皇帝が存在しているわけではない。

 教皇は血統で選ばれるのではなく、各神殿の代表者の中から会議によって選ばれる合議制となっている。


 この世に存在する全ての神の祖が大神ネフィスであり、何らかの神を信仰する者は突き詰めれば神の祖であるネフィスを信仰している、というのが大神ネフィス神殿の教理の一つとなっている。

 そういった教理から、ネフィス神殿の教皇は大小様々な神殿より代表者を募り、その代表者の合議をもって選出される。

 勿論、大神ネフィスを信仰する者も多数居る、というか大神ネフィス信仰はこの世界では大多数が信仰している最大規模の宗派である。

 歴代の教皇にはネフィス神殿の教徒が名を連ねているし、エフィネス神聖皇国内ですら『教皇への近道はネフィス教徒となること』と言われるほどにエフィネス国内、引いては世界中の宗教界でのネフィス神殿の影響力というのは大きい。そのトップである教皇の地位や権力の大きさは推して知るべし、である。


 そんな、世界の権力の一部握ると言っても過言ではない大神ネフィス神殿の教皇が、現在フェスタたちの前に座っている。


 ここはネフィス神殿内、謁見の間。

 謁見の間の広さは、王城で例えるならダンスホールほどはあるだろうか。

 パーティーを開くとすれば400人、軍隊を整列させれば1000人以上は余裕で収容できそうな広さである。

 壁際には衛兵がズラっと並び、部屋の入口から教皇の椅子がある場所にまで敷き詰められた赤い絨毯の脇には高位の神官たちが隙間なく並んで立っている。


 そんな中で、フェスタ達は片膝を着きながら首を垂れて教皇からの声掛かりを待っていた。


「使いの人、たしか『非公式で』って言ってましたよね?」


 囁くような小声で、周囲には聞こえないように愚痴ったのはフェスタである。

 フェスタ達の位置関係は、教皇への報告のあるニティカが一歩前に、その後ろに左からフェスタ、ジバ、アリサの順で並んでいる。


「これでも非公式な謁見用の規模なのかもしれませんね」


 ジバが、これまた周囲には聞こえないような声でフェスタの愚痴に答える。

 既に教皇が椅子に座ってからたっぷり3分ほどの時間が過ぎている。

 顔を上げれないので周囲で何が行われているのか分からないのだが、フェスタもジバも、少々気分が焦れてきている。


 ちなみに、三人の格好はニティカが新たに購入した巫女服、ジバは普段使いとは違う金糸で刺繍の入った高級そうなローブ、フェスタとアリサは簡素なものとはいえドレスを着て来ている。

 それぞれジバが昨日のうちに用意してきたものである。

 非公式とはいえ、教皇の前に出るのであれば服装で難癖をつけられる恐れもある。

 そう言いながらジバが用意してきた服は採寸されたようにサイズがピッタリだったのだが、そのことをジバに突っ込むような無駄な真似は誰もしなかった。


「苦しゅうない、(おもて)を上げよ」


 ようやく声が掛かり、頭を上げる一同。

 初めて見る教皇の顔はーー真っ白な仮面に覆われていた。

 その姿を見て、ジバ以外のメンバーは驚いた顔を隠せないでいる。

 ジバが驚いていないのは、教皇が襲撃や暗殺を避ける為に教皇就任から死ぬまで、一部の人間を除く人前では顔を隠す仮面を外さない、という事を知っていたからである。

 ネフィス神殿の巫女であるニティカでさえ知らなかった事をジバが知っていたのは、単に人生経験の差である、としか言い様がないが。


「衆目に顔を出せぬ立場ゆえ、この格好で許せよ」


 そう言いながら、教皇は側人より豪奢な錫杖を受け取る。

 錫杖を受け取ってから椅子より立ち上がり、錫杖をフェスタたちの頭上に振り上げながら宣言をする。


「試練の迷宮を突破せし強者に、大神ネフィスからさらなる祝福があらんことを!」


 教皇の宣言の瞬間、フェスタ達を含む、謁見の間に居る全ての人間が頭を垂れた。

 誰に強要された訳でも無く、自然と『頭を下げなければならない』という気持ちになってしまった。

 そんなフェスタたちの頭上に、キラキラとした光が降り注ぐ。

 光は、頭を垂れるフェスタたちの身体に触れたかと思うと、そのまま吸い込まれるように消えていった。


「これにて、謁見を終わる!

 皆の者、大儀であった!」


 教皇がそう宣言し、入口とは別の、謁見の間の横にある扉に消えて行く。

 呆気ないほどにアッサリと終わった謁見に、毒気を抜かれたように謁見の間から退出しようとする一行。

 アリサなどは歩きながら「こんなもんなのかい?」と首を捻っている。


 しかし、謁見の間の出口で、高位神官に呼び止められた。

 「別室にて、教皇様がお待ちになっております」と。

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