フェスタの冒険 たらい回し
基本的な方針が決まり、とりあえずは旅の準備となる。
旅に使うアシの手配や食糧の準備、情報の入手などやることは山ほどある。
フェスタたちのパーティーの場合は大抵そういった雑事をジバが一手に引き受けているのだが、今回は分担して、となった。
ジバが「調べたいことがありまして」と言い出し、買い物関係は女性陣が分担して行うことになったのである。
ちなみに、フェスタの剣の修理に関してはロードレット大陸に良い鍛冶屋が居る、というジバの提案によって次の目的地が決められてしまっている。
南ロードレットの山岳地帯に、ジバが昔世話になった非常に腕の良い鍛治師が住んでいて、絶対にフェスタの剣の修理も出来るはずなので無駄足を踏まない為にもそちらへ修理に向かおう、とジバが強硬に主張して押し切られてしまったのであった。
そういった訳で、パーティーの面々は現在単独行動中である。
アリサはジバから何やら教えて貰ってから交通手段の確保へ。
ニティカはフェスタと分担しての食糧の買い出しへ。
ジバは先ほど述べたように、何やら調べ物ということでどこかへと出掛けて行った。
そして、フェスタであるが、ニティカと分担した買い物の残り、だけではなかった。
実は、買い物に志願したのも、分担して用事を済ませようと提案したのもフェスタであった。
ジバが買い出しに参加しない、と聞いた瞬間にフェスタの脳裏には作戦が浮かんだのである。
エフィネスで剣の修理を済ませしまい、目的地をホーク大陸付近に変更できないか、と。
悪知恵の浅知恵である。
結論から言ってしまおう、この作戦は大失敗であった。
買い出しを手早く済ませ、エフィネスの町にある鍛冶屋へと向かったまでは良かった。
しかし、宿の最寄りにあった鍛冶屋で壊れてしまった剣を見せたところ、あっさりと断られてしまったのだ。
思えば、これがケチのつけ始め、というヤツだったのかもしれない。
最初に入った鍛冶屋の主人は細面の若者だった。
彼は「この材質の剣はウチじゃあちょっと打ち直せないねえ」と、剣を一目見るなり断ってきたのだ。
だが、彼は自分の師匠という人を紹介してくれた。
二軒目、最初の鍛冶屋の師匠という髭面で筋骨隆々の壮年男性だ。
彼は、剣をしげしげと眺めた後に「ここまで壊れちまっちゃあ俺には無理だ」と断りを入れてきた。
しかし、彼は修理専門で鍛冶屋をやっている工房を紹介してくれた。
三件目の主人は女であった。鍛冶屋には非常に珍しい。
しかし、彼女も色好い返事はしてくれなかった。
曰く、「直せなくはないけれど、元よりも攻撃力が劣るようにしか直せないわ」と。
彼女は、商売敵だけど、と言いつつも武器の打ち直しを得意としている鍛冶屋を教えてくれた。
四軒目、なんとこの鍛冶屋の主人はドワーフであった。
フェスタも、ドワーフの鍛冶の腕の有名さは知っている、期待度はかなり高まった。
だがしかし、彼にも修理は断られてしまった。
彼が言うには「鋳溶かして新たに打ち直してやることはできる。しかし、これだけ見事な剣になるとは思えん。悪いことは言わんから修理できる者を探しなされ」と。
四軒回って、全ての鍛冶屋で断られてしまったのであった。
最後のドワーフ親方に、修理ができる人に心当たりがないかと聞いてはみたが「儂の師匠ならイケるやもしれんがのお、生憎と住んでる大陸まで違うでのお」と撃沈されてしまったのであった。
見事に作戦が失敗し、しょんぼりとしながら宿への道を歩くフェスタ。
せめて買い食いでもしてから帰ろうかな、と思いつつ屋台を見ながら歩いてみるもなかなかピンとくる屋台は見つからない。
結局、現在の気持ちと合致したメニューーー串焼き肉の屋台を発見したのは屋台通りの外れに近い、宿の手前辺りの場所であった。
せめてお肉を食べて、少しでも気を晴らしてから宿に戻りたい。
そんな気持ちで屋台の人に串焼き肉を二本ほど注文し、焼き上がりを待つ。
鼻腔をくすぐるような肉の焼ける匂いに、少しだけ鬱屈とした気持ちが癒されるような気がするフェスタ。
焼き台に乗せられた肉に、良い感じに焦げ目がついてきて、いざ焼き上がり、という時である。
何者かが、後ろからフェスタの肩を叩いてきた。