ピクニックってゴブリンの巣でやるもんじゃねえだろ!?
「ぜっ……ぜっ……くっそー、なんだったオレがこんな目に……」
村長に騙されて出発すること二時間。
オレは目的地の『北の山』を登っている最中だった。
ほとんど木の生えていない殺風景な山だ。
しかも道らしき道がない上に急勾配なんで登りにくいったらない。
ロッククライミングみたいになりながらオレは必死に頂上を目指していた。
「ぜっ……ぜっ……くくく……あのクソ女勇者、ぜってぶっ飛ばす。村長もぶっ飛ばす。ふたりまとめてドラム缶につめて海に放り捨ててやる……くくくくく……」
疲れと酸欠のせいでちょっとおかしくなりはじめているオレ。
そのとき。
「こんにちはー!」
「うわ!?」
いきなり耳元で声が聞こえて、オレはびっくりして手を離してしまった。
もちろん、落ちた。
「どわああああああああああああああ!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!
急斜面をころがり落ちるオレ。
ああっ、せっかくあそこまで登ったのに!
ドカン!
「がふっ!」
ようやく下の方の岩に激突して止まった。
「うおおおおおおおおおお……こ、後頭部打った……頭のなかに星が見えるぜ……!」
「あはははは。大丈夫ですかぁ?」
さっきと同じ女の声。
ん? この声はまさか……
「てめえ! クソ女勇者!」
「どーもー!」
顔を上げると、妖精みたいに小さくて羽の生えたあの性悪女勇者が目の前を飛んでいた。
「あなたのことが心配だから、こうして幻を送って様子を見に来てあげたんですよ。私の優しさに感謝してくださいね」
「アホか! どの口が言いやがる! お前のせいでこんな目にあってるんだろうが! いーからオレを元の姿と元の世界に戻せ!」
「今日はいいお天気ですねー」
「ごまかすな!」
「こんな日はのんびりピクニックにでも行きたいですよねー」
「聞けよ! つーか今のオレの状況が見えねーのか!? こちとら命がけのピクニックの最中だぞコラ!」
「あっ、ほらほら、あの雲ドーナッツみたいな形してますよ?」
「聞けええええええええええええええええええ!」
ぐうううううううううう!
こいつには優しさとかそういう感情はないのかよ!?
どんな勇者だよ、マジで……。




