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Dragon Travel Story  作者: SIOYAKI
第二部第六幕 猫と剣と子どもと灰被り姫のお話
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第二部あとがきとその他

 第二部「西方旅路編」はこれにて終幕。ヒビキ達の冒険にお付き合い頂き、誠にありがとうございます。


 今回の西方編、第一部での前振りを覚えていた方の中には疑問を抱いた方も居たことでしょう。

 西は数理の国家であり、合理に支配された民が生きる場所であると。そう語った割には、余りに感情的な人物が多く出て来たのではないかと。


 ぶっちゃけ、第二部開幕直前にプロットを書き換えた影響です。元々の予定では、ディエゴとサンドリオンの二人を除いて、感情を感じさせない機械的な人間ばかりにする心算でした。

 例えば当たり前の様に間引きを行う村落があり、間引かれる側が納得して死んでいくとか。ノルテ・レーヴェの都市は巨大コンピュータに支配されていて、人はあらゆる行動全てを完全管理されているとか。そう成る予定、でした。


 けれどそれだと中々途中の展開が組めず、悩んでいた所でふと気分転換に新作を書きたい誘惑が襲ってきたのです。

 しかしこの状況で新しい物を書き出せば、絶対途中で筆を折る。けれどやはり、一途に恋する男の子が努力する姿を書きたい。そうだ、行き詰ってる第二部を恋物語にしてしまおう!


 その結果、セシリオと言うキャラクターが誕生しました。西方の前評判を最低限残す為に民は契約に縛られると言う設定を作って、それを破って恋に生きると言う情熱野郎を演出する。その点は我ながら上手く行ったと思います。

 反面、割を食ったキャラも居ました。例えば第二部中ボスポジで懐の深い大物悪訳路線で行く予定だったのに、セシリオの為に生えて来た妹を殺し掛けると言う駄目兄貴に成り下がったディエゴさんとか。ライバルポジでルシオが生えた結果、大物化した灰被り姫に反比例する様に小物化していったディエゴさんとか。本気出せば滅茶苦茶有能と言う設定が生えた結果、本気すら出していなかったという駄目っぷりを示したディエゴさんとか。大体ディエゴにーさんですかね。後、ポンコツ設定が生えた水の精霊王。


 ともあれ、世界観設定からは少しずれた気もしますが、合理性に主軸を置いた元の展開より恋愛に主点を置いた今の方がより良い形に出来たのだと思っています。

 セシリオとキャロとディエゴの出番はこれにて一旦終了。次に出る機会があるとしたら、第四部以降にちょい役として位ですかね。人気や要望があれば、番外編とか考えてみるかもしれません。




 次回、第三部は北方の獣人桃源郷を舞台に、聖教会の異端審問官達と対立していく予定です。

 中央大陸まで行くか、北方でボスキャラと戦うかはまだ未定。中央の場合は敵が決まっているのですが、北方の場合誰と戦わせようかが悩み所。取り敢えず今回のセシリオみたいに、第三部の主人公とでも言うべきキャラが登場します。







◇人物解説と裏話。



〇セシリオ

 第二部の実質的な主人公。十歳前後の少年で、産まれながらに奴隷だった関係上、実年齢は本人にも分からない。

 褐色の肌に黒い瞳は西方南部の特徴だが、生まれは西方最北端と言う中々にややこしい出自をしている。


 性格は本編での通り、惚れっぽい少年で恋に恋するお年頃。けれど一度惚れ込んだのなら、何処までも一直線で駆け抜ける。

 果てが断崖であろうとも、跳び越えてやると言う気概に満ちた男の子。男の矜持や男の冥利と語る様に、何処か古臭い考え方をしているのは奴隷頭であったタコ親父の影響だった。


 最終的に記憶喪失となってしまった結果、第二部終了後の彼では蠍の鎧や竜の爪を使う事が出来なくなっている。

 それでも大切だったことは忘れていない為、チャンピオンに学んだ拳の打ち方などは覚えている。その身に染み付いた戦闘経験も相まって、今の彼も決して弱くなどはない。



〇カロリーネ・ロベルティナ・アブド・レーヴェ

 セシリオにとってのヒロイン。設定年齢は十二歳で、セシリオより二つか三つ上の想定。その影響か彼の事を暫くは、年下の子として見ていた。

 己よりも小さな子が、救いに来たと手を伸ばす。その行動に心が救われるのと同時に、相手は己よりも小さいのだから自分がしっかりしないといけない。最後の局面に至るまで、そしてその後も、キャロの心には常にそんな想いがありました。


 故に彼女が望んだのは、守られるだけではなくて、共に立って歩くこと。同じ目線に立って初めて、追い付こうとしていた小さな子の背に、見惚れていたのだと気付いた少女。

 とっくの昔に好きになっていたのだと、分からなかったのはそれが理由。兄との確執だけではなく、相手は守るべき年下の子であった。そういう決め付けが、恋の成就を阻んでいた。ぶっちゃけ、この子は頭が固い。


 また途中で生えた水精霊王の血族は全員ぽんこつと言う設定通り、キャロも放っておくとやらかす系のぽんこつ。

 そもそも従者達が死ぬ気で逃がした筈なのに、木っ端な盗賊に捕まって奴隷として売られている時点で肝心な所で無能なのは確実だったりする。



〇ディエゴ・イブン・アブド・レーヴェ

 西方編の黒幕であり、登場する度に株が下がっていったであろう珍しい男。元々は悠然と構えて、チェスを打つかの様な態度で罠を仕掛けてくる大物系の予定だった。だった。

 望みの果てに、血縁者を殺し尽くした。だからもう止まれないと言うのは元からあった設定だったが、セシリオのヒロインを生み出そうとした結果一人逃したと言う大ポカをやらかしたことにされた人。


 そもそも西方南部への進行の為に動かしていた末端組織がキャロを捕えている事に気付けなかったり、灰被り姫の大物化に伴って配下が狂人ばかりになってしまった挙句最後に裏切られたり、設定変更の煽りを最も受けた人物であることは間違いない。

 第二部終了後も野望は変わらず、しかし古き友に良く似た子どもには強く言えないと言う情けなさを見せる様になった人。セシリオとキャロが彼の傍に居る限り、彼がやらかすことはもう二度とないだろう。


 因みにセシリオが居なくなった場合、キャロと化学反応を起こして今回以上のやらかしをする裏設定がある。ルシオが回収した悪竜王の爪は(リオンが逆探知されそうだから持ちたくないと嫌がった結果)この人に渡され、研究機関に回していたと言う裏設定もある。研究者が優秀だった所為でクローン培養に成功しつつあったがその途中で西方全域が津波に飲まれ散逸し、何か凄い魔物がどっかで生まれててもおかしくはない状況になってしまっていると言う裏設定もある。裏設定のままにしておこう。



〇サンドリオン=セニシエンタ=シンデレラ

 中央大陸生まれの元貴族。当時は今程に腐敗していなかった王国で、下級貴族の娘として蝶よ花よと愛でられて生きていた。

 だが父親が再婚し、その相手に毒殺された頃を境に彼女の境遇は一変する。意地悪な継母と義姉達に虐められ、魔女に出逢う事はなく、果てに奴隷と売り飛ばされた。


 名目上は母方の親戚との婚姻と言う形であったが、実際には肥え太った中年男に奴隷としての扱いを受ける日々。拷問趣味の男に壊され切った後、死んだと言う扱いにされ裏社会に商品として流された。

 身体を壊され切っていた彼女は拷問用の奴隷として、けれど美しい顔だけはそのままだったから、様々な主人の下を転々とする事になる。その日々は苦難と言うのも生温く、誰もが狂い果てる程の地獄であった。


 後は本編でも語った通り。嬲られる中でも少しずつ知識と力を蓄えていき、己を飼っていた主人を殺害して自由と成る。その時に見た空の綺麗さが、彼女の原風景と焼き付いた。

 元よりその本質は聖女の様で、己を破滅させた継母すら最後まで憎めなかったと言う筋金入りの善人だった。だからこそ彼女は誰でも愛せてしまう、最低最悪の外道に成り果ててしまったのだろう。


 愛する事と、壊す事が矛盾しない。元より醜悪な者でも親しくあれば抱きしめてしまえる女であったから、嘆きも苦痛も絶望も全て愛せてしまえたのだ。



〇ルシオ

 黒き白貌と呼ばれる少年。セシリオのライバルで、実年齢もほぼ同じ。産まれも北と似通っている。

 先天的なアルビノで、不吉だからと迫害された。と言うのは迫害していた者らの作った名目で、実際には集団の不満の捌け口として使われていただけだった。


 物心ついた時から周囲は全て敵であり、何もかもを憎んで生きて来た。本来ならばとうに死んでしまえただろうに、人の意識の向いている場所が分かると言う才能が彼を生かした。

 五つになる前に己に暴力を振るっていた父母を殺害した後、窃盗を繰り返しながらに半年を過ごす。そうして生きる理由も分からぬまま、もう死のうかと考えた時、彼は灰被り姫と言う運命に出逢った。


 彼女は愛した。浮浪児同然だったルシオを、悪臭も気にせず抱き締めた。その愛情は歪んでいたが、彼にとっては初めて感じた暖かさ。

 故にこそ、ルシオはサンドリオンを追い掛けた。母と慕ったその人が抱き締めてくれているから、ずっと傍に居て欲しかった。それだけが、幼い少年の全てである。



〇アマラ

 煽情的な衣装を好む、灰被り姫の片腕である魔法使い。術者としては極めて優秀で、呪術という新しい体系を生み出してしまう程の者。

 戦闘者ではなく、その本分は研究者。総合力では賢者と並んで世界最高の位置にあり、最も得意とする研究・開発分野では賢者すらも凌ぐ程。灰被り姫一派の使う魔法関係の物は殆ど全て、彼女が術式理論を組み上げた物だったりする。


 引き籠らせておくことでの優秀さに反して、戦う者としては最低レベル。自分より下位の者には油断するし、気が乗らなければ途中で仕事を放り投げるし、サンドリオン以外には制御も出来ない女である。


 因みに灰被り姫と初めて出逢った時、彼女がセニシエンタごっこをしていた影響でセニシエンタとしての彼女が最も好き。名前を呼ぶ時に様付けするのは当然だし、他人が呼び捨てにしてると切れる。後セニシエンタとしてリオンが大々的に何かをやる時は、実用と保存用と観賞用の三枚チケットを買って観客として応援する位にはミーハー。


 第二部以降、脳に精霊の至宝が刺さりっぱなしになっている。命には別条がないようだが、悪い事をしていると頭が痛くなるらしい。後極稀な低確率で、綺麗なアマラになるとかならないとか。






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