薄く淡く
彼はとても透明で、しかし黄色くて赤くて蒼く淡く、黒く白かった。全てが美しく混ざり合い、その性格は緩やかで
直線的であった。私は最初、彼をとてもとても恐れた。
全ての物体をも歪ませる彼は邪神の如く私の目に焼き付けた。彼の心の闇には少でも光があった。まるで墨汁に反射する光のような、その心はかき乱され、大きな揺れとともに全ての物体を気体を液体を闇を包みながら何の情もなく
追いかけてくる。私は追いかけっこは得意な方だった。幼稚園の組ではいつでも金メダルだった。私は私以外に私よりも早いものなどいないのだと心底思っていた。しかし彼は何も言わず無口に私に追いついた。私の足は縺れ、敗北へと誘おうと言わんばかりの笑みを浮かべ、彼は私の前を
走っていた。私は敗北を覚悟した。人生が終わる瞬間彼は
とても静かに私の息を止め、少しばかりの透明を見せた。
泥にまみれ、瓦礫を運び、しかしどことなく美しく、まるで人間の作り過ぎた罪を洗い流すかのように。彼は情もなくせめぎ、私を呑み込んだ。私は追いかけっこは得意な方だった。しかし今でも彼は、水は嫌いで仕方なかった。




