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シンデレラは逆ハーレムを目指し魔女に願う

作者: かんなわ

 「おもしろい運命をしてるわね。魔王から世界を救いたい?それともあなたの生まれた国が滅亡するのを防ぎたい?」

 目の前の女性は、私を見るなり意味不明なことを言い出した。

 耳から入る、でも脳にちゃんと届いたって気がしない。


 魔王?滅亡?…怖くて謎な言葉が多くて固まる。

 何の話?それ私に関係あることなの?

 聞かなかったことにして逃げ出したい、でも彼女の視線から逃げられない。

 というかイキナリ過ぎ!


 私そんな運命いらないよ。

 通りすがりというか、流れ星が近所の方に落ちていくのが窓から見えて来てしまっただけの一般人です。

 

 「私は魔女」

 ヒッと思わず声が出た。

 背中に電気が走ったようなゾクリとした刺激、身体が震える。

 圧倒される存在感にだけじゃない、本能が本物の魔女だと告げている。 

 魔女の恐ろしい話は現実として、世界中で語られている。

 そのチカラは世界を巻き込み、人々の運命を狂わせるという。

 でも、なんで私?

 がくがく震える身体、目が痛い、喉が痛い。

 

 「シンデレラさん」

 シンデレラ…?私のコトを言っているの?

 確かに、童話のように継母とその娘達…そして父に蔑ろにされる私はシンデレラと同じ境遇なのだろう。


 「くやしくなあい?それにどちらかを選ばないと、父親から金持ちのオヤジに売り飛ばされるのよ?そんな運命イヤでしょお?」

 フフフフと笑う魔女。

 「嘘…嘘だ。お父さんが、いくらなんでも、だけど…」

 信じたくないけど、虚言かもしれないという疑いすら出ない魔女の言霊。

 嫌だ…。どうしてお父さん…私のコト本当にいらないの?

 売られるという嫌悪感と拒絶。

 父への一縷の希望が絶望に堕ちる。


 やっぱり私のことなんかもう愛してなんかいないんだ。

 何度も心の奥底に沈めてきた事実を、魔女の言葉は真実にした。

 もう自分すら誤魔化せない。


 嗚咽が聞こえる、いえ、私の嗚咽なのか…あああ、いつのまにか私は号泣していた。

 気付いたらもう耐えられない。

 私は地面に突っ伏して泣いた、目の前の恐怖の存在なんて気にせずに。 

 

 優しかった父はもういない、母と共にいなくなってしまったのだ。

 でも信じてた、どこかで信じてたんだよ!私を助けてくれると。

 そんなこと普段から思っていたわけじゃなかったけど信じてた、信じてたのに!

 心の奥底にあった信じる気持ちが砕け散る。


 どれくらい泣いたのだろう?わからないけど魔女は何も言わず私を見ていた。

 魔女の予言から見えた事実を突きつけられ、背けていた現実をようやく認める私。

 悔しい、悲しい、憎い…虚しい。

 思い浮かぶ父の顔は…もう現在の私を厭う顔だ。

 これからどうやって生きていけばいいのか、もう今までのようには生きられない。

 すがる気持ちと暗く湧き上がる気持ちが、生き上がるために魔女を見る。

 「私にどんな運命があるのか、もう一度教えて下さい」

 

 魔女は語る。

 このまま学園に入れずに売られる運命。

 これは来年王都にある貴族の通う学園に入学する年齢になることを意味する。

 でも学費に結構な金額がかかるし義理の姉2人も通っているため、貧乏貴族の我が家では…口減らしにしちゃうんでしょうね。


 そして魔女が最初に言った運命。 

 1つ目500年前に封印された魔王が復活するから私に勇者になれと。

 これは私なんかには無理じゃない?剣を握ったこともないのに。

 案の定魔女曰く、何回も死ぬ目に遭って20年間生死を懸けた戦いが続くとのこと。

 20年経験を積めば勇者になれるってこと?

 そんなの嫌だ。

 ついでに人類滅亡寸前まで行って復興も難しい未来らしい。

 そんな未来で勇者って…どの道世界は終わりなんじゃ?


 2つ目は魔王は人の心から生まれる。その魔王の卵を持った人間を救い魔王を産み出さないこと。

 どう聞いてもこっちの方がよくないですか?平和的だし誰も死なないし。


 「勇者として崇められるか、平和的に早死するかのどちらがいい?」

 「ちょっと待って!早死にってなんですか!?」

 聞き捨てならないこと言った!


 魔女はシナシナと体をクネラせて、チラチラっと視線を向けながら照れたように言いやがりました。

 なによそのポーズ、イラッ。

 「将来産んだ子供が10歳に成った時病気で死んじゃうのよん」

 

 私また固まる。

 ……色々打算。

 今13歳だから〜結婚まで数年かかって、子供ができてで…早いけど、どうせ人間いつ死ぬかわからないし、勇者になる苦労と比べたら悪くなくない?

 「他にデメリットある?」

 「んとね〜本当に好きな人とは決して結ばれない」

 「は?」

 

 それは流石に〜とか思いかけて気づく。

 愛し合う人達だって永遠じゃないわ。

 心に浮上しそうな父の顔を打ち消す、優しかった頃の顔なんてもう二度と思い出さない。

 

 本当に好きな相手じゃなくても、相手に愛されてもらえたら幸せにはなれるわ。

 愛してもこんな目にあう、父は自分の子供の私さえ裏切った。

 継母達だって、私精一杯頑張ったわ!それなのに使用人みたいに。

 私の持っていたモノ全て奪い、私を一人ぼっちに追いやった。

 使用人の同情の視線、憐れむ視線、見下すような視線…頭の隅に追いやって無視していたものが、今はハッキリとわかる。


 もう、惨めな生き方は嫌だった。

 それなら愛されるだけでいい。

 愛さえ貰えたらきっと幸せになれる。

 

 「結ばれる相手に、私って愛して貰える?」 

 「それは大丈夫よ、貴女は多くの愛を手に入れる」

 ほっとして気が緩む。

 それならいいわ、私は愛さえ貰えたらそれでいい。


 「決めたようね」

 魔女がニッコリと笑う。

 私もつられてニッコリとなる。


 「運命の歪みを修正できるように〜もとい貴女の運命を助けるプレゼントを差し上げるわ」

 煌めく鍵を差し出された。

 これを取れば、私は幸せになれる?

 ゴクリと喉が鳴った、口の中がカラカラだ。


 自然と手が伸びた、鍵に吸い込まれていくように。

 でも魔女が急に邪魔をする。


 「待って。」

 伸びた手が中途半端な格好で停まる。

 おかげでハッとする。


 魔王を復活させないようにってどうすればいいの?私はこの国を救える?

 私なんかにできるの? 

 選ばなかった運命はともかく選んだ運命で私はどうすればいいのだろう?

 

 「この鍵は…人の心の中を覗くことができるもの。心の闇を晴らすのが貴女の運命」

 プライバシーとか色々頭の中でよぎる、良い使い方も悪い使い方も。

 下衆ですか?でもきっとそんなことができたら私はある意味無敵かもしれない。

 そんな心を読んだのか魔女が告げる。


 「来年、学園に入学するでしょう?そこで男達を救いなさい」

 「達?」

 「そう、将来この国の要職に就くであろう男達をね」

 逆ハーレムを作れってこと?


 「あらぁん、その顔は色々気付いちゃってるわね〜」

 「だ、だって…この鍵があればどんな相手もホレさせることできそうだし」 

 「そうね、可能性はあるわね。人によって難易度は違うけど」 


 別に逆ハーレムだなんてそんなのいらない。

 ただこんな生活が嫌で、幸せになりたいだけなのに。

 でも、できれば良い結婚と生活したい…だけどそれもあり?

 かっこいい男の子達に囲まれる私…。

 悪くないかも?

 それに女の子の友達も沢山出来るよね、この鍵があれば。 


 鍵は常に色を変化させ輝いていた。

 きっと楽しくなる良い未来に見えた。


 「それじゃあ勇者と奴隷の運命を頂いていくわね、バイバイ」

 そして、魔女はいなくなった。

 夜の公園に一人残される。

 

 今のって本当に現実だったんだろうか?

 手の中にある鍵をシツコイ位指でなぞり確認する。

 ある、あるよ鍵。

 確かにある、私の鍵が!


 これからの運命の重さにクラッとする。

 だけどやらなきゃ。

 もうシンデレラなんて言わせない!

 

 「今、こちらの方で何か輝いてなかった?」

 「ひゃい!?」

 燃える私に、いきなり声がかけられた。 

 変な声を出して振り返ると、そこには一人の少年がいた。


 「ごめん、驚かせてしまったね」

 「い、いえ」

 ドキドキしながら私はこたえ、落ち着いて彼を改めて見る。

 上品な雰囲気で、質のイイ服装、それに…。


 「女の子がこんな時間に危ないよ」

 心配しているよって伝わる優しい声。

 あたりは暗闇、公園の時計を見ると時刻は21時半。

 流れ星を見た時刻からさほど変わっていなかった。

 魔女と長い時間一緒にいたハズなのに時刻は進んでいなかった、不思議だけど流石魔女。


 「…流れ星を見てここにきたんですよ」

 「やはり見間違いではなかったんだ。不思議な光り方で落ちていったから慌てて見に来たんだよ」

 嬉しそうな顔がカワイイ。


 少年は興奮気味に、今の流れ星ってなんだろうと私に話しながら、キョロキョロとアチコチを見渡し始めた。 

 魔女だったとは言えず、私も少年に合わせて流れ星の正体を捜すフリをする。

 私は運命を受け入れた日に、少年ーー公爵令息と出会った。



〜〜 それから1年後 〜〜


 「私、貴女のような方とお友達になれて嬉しいですわ」

 公爵令嬢ーー少年の妹でクラスメートと私は仲良くなった。


 人の心を覗き、闇を払うという良い人のフリをしている今の私。

 都合よく助けるには色々無理が来る、心が苦しい時もある。

 それなのにこの方は私を褒める。

 魂の輝きが一番綺麗なこの方からの言葉に思わず涙が出た。

 私…そんな人間じゃない…だけど嬉しい。



〜〜 それから1年後 〜〜


 「貴女を決して許しません」

 遂にこの時がきた。

 私の都合ばかりの行為は、親友を裏切るだけではなく親友を悪評にまみれさせるものだった。

 

 ごめんね。

 私は多くの人達の心を解放させてきたけど、貴女の心だけはけがしてしまった。

 目の前の令嬢の魂が黒く染まってゆくのが見える。


 あああ、なんてことだ…。

 胸の奥がギュッとする、痛い。

 でも令嬢にした事を考えると、痛いなんて言えない。

 

 私の周囲にいる方々が令嬢を部屋から追い出す。

 彼女の兄ーー少年もまた出て行く。

 「妹がすまないことをしてしまった。あんな妹を持つオレはこの場にいられない、さようならだ」


 いいえ本当は何も悪くないの。

 悪いのは私。

 だけど仕方がなかったの。

 ゴメンナサイ。

 

 もうこの運命から降りられない。


〜〜 5年後 〜〜


 子供がようやく生まれた。

 双子の女の子。


 王子と結婚しても、なかなか懐妊しない私は色々なところからとやかく言われた。

 その度私はその人の心をいじりおとなしくさせてきた。


 あと10年なのね。


〜〜 10年後 〜〜


 もうすぐ死ぬ私。

 上の子はベッドの横で泣きじゃくっている。

 王様も悲しみを堪え体が震えている。


 下の子にはもう会えない。

 去年大病を患ったと療養のため、王都から離された。


 でも知っている。

 王家の双子は不吉だという伝承があることを。

 色々あったけど私の力ーー鍵ではどうしようもなかった。


 殺されていないよね?

 

 あの日見た流れ星が瞼の裏にうつる。

 涙が落ちる。


 私これで本当によかったの?


 願わくは魔女、あの子を助けて。

 

ご覧頂きありがとうございました。


幾つか話を創ったけど文章力ないので短編で練習中。

この話は元々別の話のヒロインのお母さんの話です。

そちらを書く前に練習してみたりの短編、2時間半かかった〜ふい〜。


この後、下の王女は仮面をつけられ幽閉、幼馴染の少年は2つの運命『魔王』と『勇者』を捨て騎士に成り上がる予定は未定な、です。

こちらも一昨日位からボチボチ考えて書こうとして、先に練習でコチラと言った感じです。


またご縁がありましたらご覧くださいませお願いいたします。

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