遊びにきたわんこ
『箱庭の薬術師』1周年記念です!
やったねひゃっほい! と、いうことで。小話企画をまたやってみました。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
みぃさんよりリクエストいただきました!
お犬さまの再登場
小話で以前書いた、『迷子のわんこ』の続編的なものになります。
そちらを読んでからのほうが楽しめるかなと思われます。
リクエストありがとうございました!
『わんわんっ!』
「ん?」
庭で野菜に水をあげていれば、聞こえてくる犬っぽい鳴き声。
そしてそれは、ついこの先日に聞いたものとよく似ていて。私の胸が、期待にどきどきと高鳴った。
声がするほうを振り返れば、きゅんと胸がしまった気がする。そこには、この前初めて会った可愛い薄茶色の子犬がいた。
「あ、あ、遊びにきてくれたの⁉︎ 嬉しいよ〜‼︎」
『わんっ!』
その場にじょうろを置いて、飛びついてきた子犬を抱きしめた。
わあああぁぁあ、もふもふですっ!
どこかの泉で水浴びでもしたのかな? と、思えるほど汚れていない野生の? 子犬。
私の顔をぺろぺろ舐めて、大分懐かれているんだと嬉しくなる。
「あ、きゅうり食べる?」
『わんっ‼︎』
まってました! という勢いがいい子犬の返事が可愛くて。
もぎたてきゅうりをプレゼント。
「あ、今日は怪我してないね。よかった、心配だったんだよね」
この間は足に怪我をしていたから、すごい心配だった。だってここは森の中で、魔物だってたくさんいる。
かくいう私もハードウルフに食べられそうになったことが。神様のおかげで助かったけれど、あのときは死んだと思いましたよ。
子犬なのに、よくこんな魔物のいる森で生きていけるなぁ。……もしかして、実はすごく強かったりするんだろうか。
見た目は子犬、しかしその実態は……正義のヒーロー! みたいな。
「って、そんなわけないか。よしよし、いっぱい食べるんですよ〜!」
『わんっ!』
わしゃわしゃと撫でて、もふもふする。あぁもう、ふかふかで可愛いなぁ。
いつまでももふもふしていたいなぁ。
「あ、そうだ!」
『わふ?』
「こっちこっち、ちょっとおいでわんちゃん」
『わんーっ!』
子犬を手招きをしつつ、じょうろを持って庭の端っこ、薬草を植えてるエリアへ足を運ぶ。
子犬が怪我をしてしまったときのために、回復薬を渡しておいたらいいかなと思うのですよ!
うん、これは名案だと思う。
ポケットにしのばせておいた瓶をひとつ取り出して、体力草を摘む。そこにじょうろの水をふりかけてっと。
「ふふ、わんちゃん見ててね!」
『わん?』
「天使の歌声!」
私がスキルを唱えれば、温かい光とともに回復薬ができあがった。
可愛いハートの模様がついた瓶で、その出来に満足する。
これを……そうだ、りぼんにくくりつけよう。髪をまとめていたりぼんを解き、回復薬をしっかりと結びつける。
「おいでおいで! これを首輪にしてあげるね。りぼんは後ろで結んで…っと、うん! すごい可愛い! わんちゃんりぼん似合うねぇ〜!」
『わんわーっ!』
「えへへ、どういたしまして!」
嬉しそうにして、私に飛びついてきてくれた。怪我をしたらこの回復薬を使うんだよと言い聞かせて、もう1回もふもふしておいた。
だって可愛いんだもん、仕方ないよね。
夕方まで一緒に庭を駆けずり回って、お腹が空いたら野菜を食べる。
ちょっと贅沢な暮らしだなと思っていたら、鶏もやってきて仲間外れにするなと言わんばかりに突っつかれてちょっと焦った。
というか、鶏と子犬が一緒に遊ぶとか少し不思議な光景かもしれない。これも異世界ならでは……なんだろうか。
「わんちゃんは、お母さんとかいないのかなぁ……? ひとりだと、さみしくない?」
『くうぅん?』
「んー、わかんないか。まぁ、いつでも遊びにきていいし、ここに住んでもいいからね! もふもふ〜!」
あぁ可愛い。しかももふもふだからあったかい。ずっともふもふしていたい。
そう思っていたんだけど、どうやら子犬は帰るようで……森のほうへ歩き始めた。
残念。もしかしたらうちの子になってくれるかと思ったのに。
「気をつけてね、またいつでも遊びにきてねっ!」
『クッ!』
『クエー』
『わんわんっ!』
私と鶏で子犬を見送れば、一生懸命にしっぽを振ってくれた。
ちょっと寂しい。けど、なんとなくまた会えるような気がした。
リグリス『犬だから瓶を開けられないのに、ひなは相変わらず可愛いなぁ……』
的な。




