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Side effect  作者: 垂水蒼重
9/13

Reaction 9

 「っ・・・ぁ・・・ふふ、性急」

 舌を絡めて、息を乱しながら、ロイは笑う。その駄々漏れの色気、なんとかしてくれないかな。

 「だって、余裕なんか、な・・・んっ」

 俺の言い訳は、柔い舌に絡めとられてしまった。

 息苦しいのに、唇と舌の弾力が、最高に気持ちよくて、口腔の熱に浮かされる。

 離れ難くて貪り続けていたら、突然ロイに耳をくすぐられた。

 「うわっ!?」

 イタズラっぽい光を湛えた目が、俺を捉える。

 「耳、弱いんだな」

 艶を含んだ声で耳元で囁かれ、耳朶を食まれる。ゾクリとした感覚が背筋を走った。

 「や、め・・・!」

 耳を舐められる濡れた音と息遣いから、ゾクゾクとした快感に全身を襲われる。俺は思わず、ロイの背中に腕を回して、キツく抱きしめた。

 「ヒュー、苦しい」

 非難の言葉とうらはらに、その声のトーンには、やっぱり笑いが含まれている。


 「ロイが、変なイタズラするから・・・!」


 俺の泣き言を聞いて、ロイは、ピタリと動きを止めた。

 あれ?なに・・・?


 「ヒュー。お前、もしかして、初めて?」


 突然、そんなことを問われ、返答につまり、俺は黙ってロイを見つめた。ロイは、自ずと答えを拾ったようだ。

 「―――そこまで奥手だと思ってなかった。初めて、オレでいいの?」

 気恥ずかしさに、俺は目をあわせられないまま、黙って頷く。

 「・・・ま、いいか。あとになって後悔したら、予行演習だったとでも思え」

 「思いませんよ、そんなこと」

 酷い言い種に、思わず顔をあげて反論すると、ロイは、さっきまでのからかうような調子とは違う雰囲気で、やわらかく微笑んでいた。

 「そうか」

 そう言って、ロイは、俺の後頭部に両手を回す。そのまま、俺の腰と背凭れの間に身体を滑らせて、ソファに仰向けに横たわった。

 俺は必然的に、ロイに覆い被さるような格好になる。

 「オレも、耳、弱いんだ」

 言葉に誘われて、耳に口付けると、ロイはくすぐったそうに肩をすくめた。

 「・・・首筋も」

 耳元から首筋にかけて、啄むようにキスを落としていくと、微かな吐息が聞こえてきた。

 「教えて、全部。ロイの、気持ちいいところ」

 「うん。教えるから・・・もっと―――」

 甘い言葉のやりとりに、目眩がする。

 そうしてふたりで、夜の更けていくままに、心ゆくまでじゃれあった。




 ロイのベッドで、いつの間にか、眠りに落ちていたらしい。気付いたときには、空が白み始めていた。

 俺は午後からのシフトが入っていた。そのまま出勤するわけにもいかないので、名残惜しいけど、部屋に戻ろうと考えた。

 ロイはよく眠っていたけれども、黙って出ていくわけにもいかない。

 衣服を整えながら、どう起こそうか悩んでいたら、気配を察したのか、長い睫毛が震えて、瞼が開いた。

 ロイは俺をじっと見つめると、手を伸ばして、覗きこんでいた俺の前髪を軽く引っ張った。

 引き寄せられて、口付ける。

 唇を重ねる手前で、少し上体を起こしたロイの、顕になったデコルテの白さに刺激されて、貪りつくようにしてしまった。

 「・・・朝っぱらから、ディープだな」

 唇を放したロイに、またクスクスと笑われる。夕べから、ずっとそんな調子だ。

 「帰んの?」

 「ええ、午後からシフト入ってて」

 「そっか・・・そこの引き出し、あけて」

 ロイが示したサイドボードの引き出しを開けると、古びた鍵が、ひとつ入っていた。

 「それ、もってけ。いつでも好きな時にきていいから」

 え・・・てことは、この部屋のスペアキー!?

 「いいんですか?」

 「やるよ。だから、ちゃんと、会いにこいよ。でないと、職場での呼び出し回数増えるぞ」

 「それはご勘弁・・・」

 パワハラだよ、それじゃ。

 「道、わかるか?」

 「大丈夫だと思います、まだ早いし、散策がてら帰りますから」

 「そうか。じゃあ気をつけてな」

 「はい。今日はゆっくり休んでください。それじゃ」

 ロイの額に軽く口付けてから、寝室を後にする。

 リビングの大きめの窓からは、朝靄の港町が広がっているのが見えた。


 部屋を出て、さっき貰った鍵で錠をしめる。・・・ホントにこの部屋の鍵だった。

 疑った訳じゃないんだけど、ちょっと感動した。すごいお宝を貰ってしまった気分だ。


 俺は、夕べからの出来事を反芻しながら、まだ薄暗い階段を降りていった。




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