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Side effect  作者: 垂水蒼重
6/13

Reaction 6

 「あの・・・」

 店を出て少し離れて、路地裏に入ったところで、俺はようやく声を出す事に成功した。

 「なんで?」

 突然、ロイに問われる。

 「は?」

 俺は質問の意味がわからず、マヌケな返事をしてしまった。

 「なんで君みたいな子が、あんな店にいた?」

 「あんな店?」

 「セマられてたみたいだけど、どういう店か、わかんなかった?―――こないだの行きずりの男、あそこで知り合ったんだけど」

 やっぱ、そういう店なのか。

 ていうか。

 「俺の事、覚えてるんですか!?」

 「・・・。出会い方としては、インパクト強烈だったからね」

 覚えててくれたなんて。しかも、それで、助け出してくれたってことか。

 「ずっと、あなたの事、探してたんです」

 「探してた?」

 花のかんばせが、僅かに曇る。

 「あ、先日の捕り物とは関係なくて!その・・・あなたの事が忘れられなくて・・・」

 ロイは、面食らったようだ。

 言ってから急に恥ずかしくなってしまったが、他に言い様もなく。

 「・・・へえ?」

 赤くなった俺を見て、ロイは面白そうに、口の端をあげる。

 「や、下心とか、そういうのあってとかじゃないんで・・・す、けど・・・」

 何を言い訳してるんだ、俺は!?

 「下心あっても、オレはかまわないけど?」

 軽・・・!

 いや、出会った時から軽いのは、わかってたけど。

 若干ショックを受けつつ、落ち着けと自分に言い聞かせ、深呼吸をする。

 「―――ロイさん。あなたと少し話がしてみたいんだけど、付き合って貰えませんか?」

 「いいぜ。それから、オレの事は、ロイ、でいい」

 「ロイ、俺の名前は、ヒューです」

 「ヒュー」

 ・・・あれ?

 名前を呼ばれて、何かがひっかかった。何だ?

 「少し先に、行きつけのバーがある。ノーマルな店だ。そこでどう?」

 「あ、はい」

 「じゃあ、行こう」

 ひっかかったものの正体は掴めないまま、通りすぎてしまった。

 ともあれ、俺は、ロイの先導するままに、後をついていった。




 連れて行かれたのは、やはり看板の目立たない、先程の店よりシックな内装の、カウンターしかない小さなバーだった。

 大人の隠れ家的な雰囲気に気後れしつつ、先程と同じ発泡酒をオーダーする。ロイも同じものを頼んだ。

 「煙草、いい?」

 吸うんだ。意外。

 「どうぞ」

 ほっそりした指先が、シガレットケースから煙草を取り出して、薄い唇に運ぶ。シルバーのオイルライターで、伏し目がちに火をつける仕草に見蕩れていたら、物欲しげに見えたのか「吸う?」と、シガレットケースを差し出されてしまった。

 慌てて辞退した俺に、ロイは目を細めて笑う。


 「ヒュー、君、ヘテロだろう?オレに対して、嫌悪感とか感じなかったのか?」

 「全然。それで困ってるっていうか・・・俺、こんなに誰かの事が気になるなんて、初めてなんです」

 また恥ずかしい事言ってる自覚はあったけど、正直に吐き出して、自分の気持ちの正体を突き止めたかった。

 「オレに、一目惚れしちゃった?」

 「たぶん。それに近いのかも」

 ロイが、からかっているのがわかったが、俺は、ごく真面目に答えた。

 「名前も、年も、普段何をしている人なのかもわからないのに、あなたの事が、どうしても頭から離れなくって。最初は、男相手に・・・って、悩みました。だけど、やっぱり気になってしまって。探して、会ってみようと、思ったんです」

 「―――で?会ってみて、どう?」

 「感動しました。すごく探したし、覚えててくれたの、嬉しかった。それに、さっきの店で、助けてくれたでしょう?あと・・・ホント、綺麗な人だなぁって」

 「なんだかオレ、君の中で、すごい株あげちゃってるんだな」

 ロイは煙草を燻らせながら、俺の話を聞いていたが、クスリと笑ってそう言った。

 「もっと、あなたの事、知りたいです」

 「積極的だな。こんな熱烈なアプローチうけたの、久しぶりだ」

 流し目でそう言われて、また恥ずかしさがこみ上げてきた。

 「・・・嫌でしたか?」

 「いや。若いなぁと、思って」

 「ロイって、いくつなんです?」

 「22」

 「なんだ。見た目に反して、実は、ものすごい年上なのかと思っちゃったじゃないですか」

 「君はいくつ?」

 「18です」

 「若いよ。まだ10代じゃないか。―――可愛いな」

 う・・・。その笑顔、破壊力半端ないんだけど。

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