表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Side effect  作者: 垂水蒼重
5/13

Reaction 5

 捕らえた容疑者は、尋問に程無く自白し、俺は晴れて面目躍如の身となった。

 翌朝、早速クライヴ大尉の元へ報告に出向いたが、一言「ご苦労」とだけ、労われた。

 ・・・まぁ、この人が、手放しで褒めてくれるとか、期待しちゃいなかったけどさ。


 それよりも。困った事には。


 あの日出会った美人が、どうしも忘れられず、ふとした拍子に思い出される事だった。まるで、脳裡に焼きついてしまったかのようだ。

 スレンダーな体躯に、さらりとしたプラチナブロンド、切れ長の目・・・なにより印象的なのは、その雰囲気で。

 彼の纏う気配は、その場の空気の色すら変えているんじゃないかと思ったほど。

 出くわした場面が場面・・・だったコトもあるのかもしれないけど、去り際に彼が見せた微笑は、これまでに出会った誰よりも艶やかだった。


 やばいな、と、自分でも思う。

 これって、一目惚れって、やつなんだろうか。

 でも、待て、相手は男だ。


 こんな堂々巡りを、何度繰返したか知れない。


 ―――ともあれ、探して、会ってみよう。


 漸く決心をつけたのは、1週間後の事だった。


 俺は、仕事帰りや非番の時間をできる限り使って、彼に出会った付近のバーや飲食店など、しらみ潰しに足運んだ。

 仕事じゃないから、目立つ聞き込みはできない。地道に探すしかなかったが、狭い界隈だからとタカをくくっていたら、3週間程そうして探してみても、一向に手がかりが掴めなかった。


 あれはイケズな上司に追い詰められた精神がみせた、幻覚だったんだろうか・・・ヤケになりかけた頃、偶然は訪れた。




 そこは、薄暗い路地にあるバーだった。店に入ると、何故か客の視線を集めてしまった。

 看板も目立たなかったし、あまり一見の客が訪れない店なのかも知れない。そう観察しながら、カウンターでアルコール度の軽い発泡酒を注文する。

 薄暗い店内に目が慣れて、客を見渡したが、やっぱり彼の姿は見つからない。

 無駄足にうんざりしながら、発泡酒で喉を潤していると、1人の男性客が俺に話かけてきた。

 「ハイ、いい夜だね」

 「・・・こんばんは」

 20代半ばくらいだろうか。

 人懐っこい笑顔をうかべているが、なんとなく、媚びるような、それでいて値踏みされているような視線を感じて、俺は警戒した。

 「やだな、恐がんないで。この店初めて?」

 うふふと微笑みながら、距離を詰められる。シナを作る様子が、なんか・・・キモい。

 適当に切り上げて、とっとと退散しよう。

 「そっすね。看板分かりにくかったし、こんなところに店あるの、知らなかったです。俺、ダチと待ち合わせだったんだけど、店間違えたかなぁ」

 「じゃあ、その偶然に、乾杯しないとね」

 男はそういって、俺の上腕に手をかける。

 なんか、ちょっと、ヤバイ気がする!

 本能的に全身総毛立った瞬間、ギイと、背後で店の扉が開く音がした。入ってきた人物は、硬直している俺に近付いてきて、ひとつ肩を叩く。

 「お待たせ」

 振り返ると、なんと、例の美人だった。

 あんまり驚いて、返事もできずにいると、反対側で俺ににじり寄っていた男が、俺の肩越しに彼を認めて声をかける。

 「あら、ロイ。この子、あんたのお手付きだったの?」

 なんか、今、凄い事を言われた気がするんだが。


 ロイと呼ばれたその人は、その質問にうっすら笑って「悪いね」と断り、「行こうか」と俺の背中を促して店を出た。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ