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Side effect  作者: 垂水蒼重
1/13

Reaction 1

 「・・・天使がいる」

 「何いってんの、兄さん。もう酔った?」

 ホールで給仕をしていた妹のポーラが、俺のつぶやきに反応して、同じ視線の先を追う。

 「やだ、可愛い・・・!」

 俺と同じものが視界に入ったらしく、ポーラも思わずつぶやいた。


 視線の先にいたのは、数年来の友人、ギルバートだ。

 厨房と対面式のカウンターに腰かけた兄貴のダリルさんと、何かを話しながら、微笑んでいた。

 「ギルバートさんのあんな笑顔、初めてみた・・・!」

 俺も、ヤツのあんな表情は初めて見た。

 気のいいヤツではあるんだが、普段から冷静沈着で、ポーカーフェイスを崩すことがない。整った顔立ちをしているせいで、ともすると、冷たい印象を与えがちなんだが・・・。

 

 「あら。やっとくっついたのかしら、あの二人」

 テーブルの向かいから、酒屋のおかみのヒルダさんが、兄弟を見てそう宣った。

 「え?」

 くっついた?どういうことだ?

 ポーラがこそっと、声のトーンを落として話す。

 「私、今日、ダリルさんが、ギルバートさんのおでこにキスしてるの、見ちゃいました」

 「えぇっ!?」

 キス!?

 「それはまた、ずいぶんとあけすけだな」

 俺の隣で、上官のジーン少佐が、冷静にコメントする。

 「あの二人、そうなのか?」

 このコメントは、ヒルダさんの旦那の、アレックスさんだ。

 「そうよ、気づいてなかったの?」

 「ぜんぜん」

 「鈍いわー・・・」

 ヒルダさんが、あきれたように言う。

 俺は、やっと、驚愕の事実を認識した。


 おそるおそる、信じられないものを見る気持ちで、あらためて厨房に視線を移すと、当のギルバートと目が合ってしまう。

 ギルバートは、すっと表情を引っ込めて、厨房から俺に声をかける。

 「どうした、ヒュー?飲み物とか足りない?」

 「こっちは大丈夫でーす!」

 俺が答える前に、ポーラが調子よく返事をする。

 「邪魔しちゃダメじゃないの、兄さん!」

 なぜかポーラに叱られる。

 いやだって、・・・男同士だぞ。しかも、血のつながりがないとはいえ、兄弟だろ。

 どうしたら、そんな事態になるのか、不思議でならなかった。 


 そこまで考えて、はっと気づく。俺は、隣の少佐をうかがった。

 少佐は、昔、ダリルさんの恋人だった。

 「私を気遣う必要はないぞ、ヒュー」

 少佐は俺の視線に気づいて、可笑しそうにいう。

 「昔から、あの二人が両想いなのは、知ってたからな」

 そうなのか!?それもまた俺にとっては驚愕だった。

 「少佐の旦那様になる方って、どんな方なんですか!?」 ポーラが、状況についていけない俺をあっさりと切り捨てて、話題を切り替える。

 「少佐はやめてくれ。もうじきに、退役するんだから」

 「はい、じゃあ、ジーンさんて呼んでいいですか?」

 「ああ」

 「男前でお金持ちの幼馴染よねー。商家の長男で、ナント3つも年下!」

 自分も少佐と幼馴染のヒルダさんが、口をはさんで話を戻す。

 「ヒルダ」

 咎めるような口調だったけど、これは照れてるのだろうか。

 「いいなぁ・・・!私も早く、いい旦那さん見つけたいです」

 「ポーラなら、いくらでも見つかるだろ」

 ポーラの夢見がちな発言に、アレックスさんが応える。

 「そうよねぇ。これから毎日あの調子じゃ、ポーラもあてられちゃうわよね。ヒュー、あんた、同僚に、誰かちょうどいい人いないの?」

 「いやー・・・」

 ヒルダさんにつつかれたが、それ以前の話にまだついていけてなかった俺は、返答につまった。

 「兄さんアテにしてたら、嫁き遅れちゃいそうだから、頑張って自分で見つけます!」

 「あはは、確かにね」

 妹にはコケにされ、ヒルダさんには笑い飛ばされ、俺は頭をかいてうなだれてるしかなかった。


 


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