第一話 -8
巧と斉藤は、小林を連れて公園へときた。
とりあえずベンチに小林を座らせる。
「……全部話す」
唐突に、斉藤がつぶやいた。
「でも、信じられないような話だからな」
「………」
巧の無言を了解ととったのか、斉藤が話し出した。
「俺達は、夜遅くにファストフード店で雲雀野を見かけたんだ。
今日の放課後のこともあって、ちょっとビビらせてやろうって話になって。
ほら、ずっとほったらかしになってる工事現場あるだろ?
あそこにおまえが来るって嘘ついて呼び出した。
ちょっとビビらせるだけのつもりだったんだけど、雲雀野のやつ、プレハブ小屋に鍵かけてどこかに電話し始めて」
ふと巧の頭に、瑞穂からの着信のことが思い出される。
「どこに電話してたのか知らないけど、普通に考えたら警察だよな。さすがに焦って、まずは電話やめさせようと思って、ガラス割って無理やり中に入ったんだ。
で、謝ろうとしたんだけど……何か大内がキレちまって……
大内が雲雀野のスマホを壊して……で、雲雀野を押し倒したんだ。
こうなったらマジでヤってやるって」
いつの間にか、巧の拳はギリギリと音をたてそうなほどに強く握られていた。
「俺と小林は止めたんだけど、大内のやつ全然聞かなくて。
そのときだ。
うまく言えないんだけど……大内と雲雀野がいる場所が歪んだというか……何か蜃気楼みたいな感じで……
次の瞬間、腕が……
人間の腕が生えてきたんだ!
何もないところから突然腕が2本出てきて、大内と雲雀野を掴んで……蜃気楼の中に引きずり込んじまった……」
「……は?」
「俺と小林は怖くなってそのまま逃げてきて、そこにおまえが現れたってわけだが……」
「なんだよ、それ……?」
「だから言っただろ。信じられないような話だって。それでも、それが真実なんだ」
「でも……信じられるわけ……」
「小林のこの様子じゃ証明にならないか?」
斉藤の話が聞こえていたのだろう。小林はさっきよりも縮こまって、がたがた震えている。
「………演技……じゃなさそうだけど……」
「なんなら工事現場行ってみろよ。プレハブ小屋の中に、雲雀野のスマホが落ちてる」
「………」
どうせ他にあてもない。
巧は2人をそのままに、工事現場へと走った。