番外編 青龍 -6
再び外をとぼとぼと歩く。
あれはほんとにりんねだったのだろうか……いや、でもそんなはずは……
確認はできなかった。おれがクロスアーク隊員じゃなかったから………
「……あ」
ふと思いつく。
おれはクロスアーク本部に引き返すため、走った。
「入隊させてください!!」
本部に着くなり、受付で叫んだ。
隊員じゃないから追いかけられなかった。なら、隊員になればいい!
周囲の目がおれに集中してるのを感じる。
「あの……えっと……」
受付のお姉さんがおろおろしている。
「どうかしたのか?」
男が話しかけてきた。
「あ、隊長さん」
お姉さんの顔が心なしか明るくなる。
隊長……?
改めて男を見る。
こういう人をイケメンって言うんだろう。背が高く細身で、男だけど髪は長くてさらさらで、切れ長の目は鋭く、でも寂しさを感じるような瞳。
「この男の子が入隊させてくれと……」
「ふむ……」
男がじろじろとおれを見る。
「なぜ入隊を望む?」
「え?えっと……」
金髪の少女に会いたい!なんて言ったら、確実にアウトだろう。
「悪い人を捕まえることで、家族を守ることに繋がるかなって……」
こんな理由でどうだ?
「だが、きみはまだ若い。まだご両親に守られていてよい歳だ。そういうことはもっと大きくなってからでいいのではないか?」
「親、いませんから」
「ふむ……」
まずいこと聞いたとか思ってるのだろうか。正直、親がいないことにはもう慣れた。
「いいだろう。今は募集していないのだが、特別だ。試験を受けるがよい」
男はお姉さんにいくつか指示すると、去っていった。
そういえばあの男の声……りんねが暴走したときに話した白い鎧の人と似てたかも……
数日後、おれは試験を受け、最年少のクロスアーク隊員となった。
今度は堂々と本部の中を歩き回れる。おれはさっそくあの金髪の少女を探した。
「……どこにいるんだ?」
本部内はそれなりに広い。人数もけっこう多い。
簡単に見つけるのは難しいとは思っていたが、まさか数時間探しても見つからないとは……
今日は来てないのかな?明日また探してみるか。
そう思い、出口へと向かう。
ふと受付の方に目をやると……
「……金髪っ!!」
いたっ!!受付に走り寄る。
「お疲れ様です……どうしました?」
受付の金髪の少女は、普通に挨拶してきた。
「……いや、なんでもない……です……」
違った。りんねじゃない。
正面から見ると少女の髪は長く、サイドテールにしていた。見る角度の違いでショートカットに見えていたのだろう。我ながら奇跡的な勘違いだ。
りんねじゃない可能性なんていくらでもあった。
でも、こうして現実を突きつけられると……きつい……
「あの……ほんとに大丈夫?」
がっくりうなだれたおれに、少女が心配して話しかけてくる。
「あ、もしかして最年少で隊員になった子?」
「え?あ、ああ……」
「やっぱり。受付の人達の間でも有名だよ。名前は?」
「最宮……静春」
「最宮君か。あたしのことは『ティネ』でいいよ。歳も近そうだし、これからよろしく」
そう言うと、ティネは笑顔で手を差し出してきた。
外人さんだろうか。適当に染めたおれの髪と違って、ティネのはとてもきれいな金色だ。
「……よろしく」
ティネの手を握る。その手はあたたかく、やわらかかった。




