番外編 青龍 -3
ある日、おれ達はラインファイトに来ていた。
「はっはっはぁ!おうちに帰ってミルクでも飲んでな!」
「ぐっ……くそ……」
おれは試合に負け、気を失った。
「…………」
目を覚ましたとき、そこは闘技場内の医務室だった。
「静春っ!よかった~」
ベッドの横には、りんねがいた。
「体調は?大丈夫?」
「うん……大丈夫……」
本当はまだ頭がぼんやりするが、問題はないだろう。
「なに、あの相手!毒薬隠し持ってるとか反則じゃない!?」
おれが闘った相手……普通なら勝てる相手だった。が、隙をつかれて毒をもられ、実力を出せずに負けてしまった。
「毒薬持ってること、ぜったい申請してないよ!つーか、毒薬の使用なんて許可でるわけないし!」
りんねはかなり頭にきてるみたいだ。
「スタッフに言おうよ!」
「いや、たぶんダメだと思う」
今の体調からして、体内の毒は完全に抜けているだろう。相手も毒薬を持っていた証拠は残してないはずだ。申告したとしても、証明するものがない。
「あーもう!悔しいなぁ!」
「油断したおれも悪かったし」
「悪いのはあっちよ!」
りんねがぷんすかしながら、立ち上がろうとするおれに肩を貸してくれる。
が、
「んぎゃっ!!」
いきなり突き放された。
気付くと、りんねは電光掲示板にくぎ付けになっている。
「この名前……さっきの静春の相手よね」
「ん?ああ、そうだな。もう一戦するつもりなのか」
キラーン!と、りんねの目が光った気がした。
「あたし、あいつと闘っ――」
叫びながら走っていくりんね。
途中から聞き取れなかったが、何をしに行ったのかはわかる。
「ふぅ、まったく」
おれは観客席へと向かった。
りんねの試合が始まった。
相手との距離をうまく取っている。あれなら毒をもられることもない。
しかし……
「りんねっ!」
突然、りんねが膝をついた。息が荒く、苦しそうだ。
「……毒……いつの間に……!」
席を立ち、スタッフがいるところへ走る。今なら毒薬を使った証明ができるはずだ。
走りながらフィールドを見る。
「りんねっ、もうちょっと耐え――!?」
りんねがふらふらと立ち上がっていた。そして……
「グ……アアアアア――!」
咆哮。
りんねの気が黒く染まっていく感じがした。
「りん……ね……?」
次の瞬間、りんねが相手へと飛びかかり、
「りんねっ!やめろっ!!」
おれの声が届くはずもなく、血しぶきがあがった。
「……っ!!」
一瞬静まり返る場内。
「きゃああああっ!!」
どこからか上がった悲鳴を合図に、観客が我先にと出口へ走る。
おれはフィールドへと向かった。




