番外編 朱雀 -5
そんなある日、私とレジェンドの試合が決まった。
やっとこのときがきた。これで……目的が果たせる……
そして試合前日、季里区からきた学生さん三人組を助けた。
女の子二人はなかなかの腕前。ラインファイトに誘いたいくらい。男の子は五行使えないみたいね。
なかなかおもしろい子達で、明日が大事な試合とは思えないほどリラックスして過ごせた。
「すぅーー……はぁーー……」
試合前、深呼吸で気持ちを落ち着かせる。
ちょっとまえに朱伽の試合があったが、見に行ってない。が、相手の実力から考えて朱伽の勝ちだろう。
「KISAさん、そろそろお時間です」
スタッフが声をかけてくる。
……行くか……
『今夜、レーヌ・ド・ルージュがレジェンドに挑みます!!さあ始めましょう!紅の女王KISA 、登場です!!』
フィールドに入る。見慣れた光景だ。うるさいほどの歓声に包まれる。
そして、
『さあ、最強の力を見せてくれ!レジェンド、ブラズの登場だ!!』
反対側の入口からレジェンドが現れ……試合が開始された。
「よう、女の挑戦者は初めてだぜ」
余裕のつもりか、五行をまったく発現させずにブラズが近づいてくる。
「会いたかったわ、レジェンド……いえ、犯罪者!!」
「おいおい、人聞きが悪ぃな」
「もう数年前の話になるわ……一人の少女が荷物を奪われたあげく、強姦されて殺された。その犯人のリーダー格だったのがあなたよ!」
「そんな昔のこと……この街でどんだけ多くの事件が起きてると思ってんだよ」
「そうね。警察もクロスアークも新たな事件に走り回っててあてにならない。だから私は……自分で妹の仇をとるためにここまできたのよっ!!」
両拳に炎を発現させ、走る。
向こうが無防備だろうが知らない。私はあいつをぶん殴るのみ!
顔面、鎖骨、脇腹、みぞおち――ただひたすら殴る。
ブラズがいつの間にか五行を使っている。『金』の気。この防御力からして、肉体強化か。でも、私の『火』は『金』に対して有利だ。このまま連続攻撃で――
「うぜぇ」
気付いたときには横に飛ばされ、地面を転がっていた。
「ぐ、あああっ!」
やばい……右腕がやられた……
「おらおら、もっと楽しませろよ」
肉体強化のせいか、スピードも速い!
ブラズの拳をぎりぎりで避け、距離を取る。
「遅ぇよ!」
ブラズが水の矢を連続で放つ。
……全部避けるのは無理だ……!
可能な限り回避。あとは左腕でガードした。
「ぐぅ……!」
水の矢は腕に深く刺さると、役目を終えたかのように液体にもどる。
「両腕が使えなくなったな。さあ、どうするよ?」
くそっ……こいつを倒すためにずっと訓練してきたというのに……まだこんなに差があるというの……!?




