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番外編 朱雀 -3

次の日――


「ここは……?」


「ラインファイトの闘技場よ。ラインファイトは知ってる?」


「はい、一応は」


客席の方へと移動する。


席はほとんど空いていた。まぁ午前中はこんなもんだろう。

適当に座り、観戦する。


「で、昨日言ってたやってもらいたいことって?」


「ああ、ここで闘ってもらいたいの」


「えっ!?無理ですよ!!」


朱伽は目を丸くしている。


「大丈夫よ。あたしが稽古つけてあげるから」


「いや、だからって……」


「朱伽、五行使えるでしょ?」


実際使ったところを見てはいないが、間違いないだろう。じゃなければ、昨晩あの大人数から逃げ回れるはずがない。あの男達だって五行使いなのだから。


「まぁ……使えますけど……」


「あなたには素質あると思うのよ。ちょっとスリリングなバイトだと思って……ね?」


「…………嫌だったらすぐ辞めますからね?」


「オッケー!!」


やった!


「あ、でも、とりあえずこっちに住むことを両親に許可もらってからじゃないと……」


お願いします、ご両親!


そのとき、観客がなにやらざわめきだした。


「ん?なに?」


試合が面白いのかとも思ったが、それほどでもない。

ただ、両者が大技を出そうとしていて……


「あっ!咲さん、あれっ!」


朱伽の指さす先には、まだ2~3歳くらいの子供がいた。フィールド内に。しかも、位置的にやばい!あの子巻き込まれちゃう!


『おっと!?これはハプニングだ!』


アナウンサーも気付いたようだ。試合の一時中断を放送する。が…


「あの二人……試合に集中してて気付いてない!?」


両者ともやめる気配がない。


とっさに走り出す。が、間に合わない!


そして、片方からは氷の矢が、もう片方からは炎の球が放たれてしまった。



両者の攻撃で、フィールド内が確認できないほどのものすごい蒸気が発生する。


スタッフも観客も子供の安否を心配してざわついているなか、私は呆然と立っていた。


あれだけの攻撃を、何の防御もせずに食らったら、大人だって無事では済まない。

ましてや子供だ。死体すら残らないかもしれない。苦しまずに一瞬で……というのが、せめてもの慰めか……



そう、今の攻撃を普通に食らえば、だ。



場内のファンがフル稼働。蒸気が晴れていくと、フィールド内には脚から炎を発した朱伽が立っていた。


そう、蒸気は互いの攻撃がぶつかりあって発生したのではない。

朱伽が炎の球を蹴り散らし、その炎を自分の脚にまとわせて、氷の矢を一蹴。二人分の炎で一瞬にして蒸発させたのだ。



速い――!



朱伽に戦闘経験はほとんどないはず。それでも、あの一瞬で、あの子を守るための方法を考え、実行した。


「………」


私の身体を震わせるのは、何もできなかった敗北感か、強敵に出会えたかもしれない高揚感か、それとも、これからとんでもない化け物を育て上げることになるかもしれない恐怖か――



蒸気が晴れ、両選手が互いに相手の無事を確認。次は近接攻撃だろうか。両者とも距離をつめる。


「いいかげんに――」


そのとき声が聞こえ、


「しなさいよっ!!」


両選手が吹っ飛び、気絶した。


蒸気が完全に晴れる。

そこに立っているのは、子供を抱いたポニーテールの少女だった。



辺りが今度は突然の乱入者にざわつき、みんなから注目されている朱伽はどうしたらいいかわからず、おろおろしている。


まだ名が売れていない選手とはいえ、一瞬で二人同時に倒してしまった少女――朱伽。

まったく……おもしろい子だ。


私はアナウンサーのところへ走り、マイクを奪った。


『あー、あー……お疲れ様』


私の声に、場内のざわつきが静まる。


『突然ごめんなさい。私はレーヌ・ド・ルージュ「KISA」。フィールド内に子供が入り込んでしまうなんて……でも、無事救出できてよかったわ。ついでと言ってはなんだけど、新たな選手を紹介させて。今回、子供を助け、かつ両選手を倒した少女――』


朱伽に再度目線が集まる。


予定より早くなってしまったが、公表することにしよう。

私が一晩かけて……いや、ぐっすり寝たけど……寝る前の数分かけて考えた、彼女のリングネームを!


『アルファベットでケー、ハイフン、エー、エス、エイチ。私の弟子「K-ASH(カッシュ)」よ!』


歓声が沸き上がる。


『K-ASH』は今回の鮮烈なデビュー戦もあり、レーヌ・ド・ルージュの弟子『スカーレットプリンセス』として、瞬く間に有名になった。

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