表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/171

番外編 朱雀 -1

妹が来る。


妹といっても、血の繋がりはない。

同じ孤児院で育った子供達の一人だ。


小さい頃から、大きくなったら孤児院を出て、いっぱい働いて、孤児院のみんなに恩返しをするんだと、よく言っていたっけ。


本当に素直で良い子に育った。


私と一緒に住む……はずだった。


妹が来る……はずだったんだ。




大雨の中を走る。


富士取区では、夜遅くは基本的に出歩かない方がいい。治安が悪いから。


でも、そんなこと考えてる余裕はなかった。


……いや、治安が悪いからこそ、私は外に飛び出した。



みちる――!みちる――!!



妹の名を叫ぶ。


どれくらい走っただろう。


街のはずれで、私は見つけた。


衣服は裸同然にぼろぼろで、


泥と血と白濁した何かにまみれ、


絶命している妹を――




「……っ!!」


ベッドから飛び起きる。


……またあの時の夢………


目覚まし時計が鳴る。

うるさいのですぐとめた。現在午後八時。


「咲さん、起きられましたか?」


扉の外から声が聞こえる。


「あー、大丈夫よー」


返事をしながらいつもの赤い戦闘着の上からコートを羽織り、部屋を出る。


リビングには男が二人。


「咲さん、今夜もきれいだね」


そう言ってきた男の名は、阿坂。見た目も性格もチャラいが、仲間思いのいいやつだ。


「また行くのですか?」


こっちは三森。礼儀正しくて、家事でも何でもこなす。


「当たり前でしょ。警察になんか任せてらんないわ」


「……お気をつけください」


二人とも孤児院の仲間だ。

あの天変地異のあとだったかな。こいつらが孤児院に来たのは。

記憶喪失だわおかしな名前名乗るわで、私が名前をつけてやったんだ。……名字だけだけど。


「いってきま~す」


二人に声をかけ、白い息を吐きながら夜の街へと繰り出す。



あの日――

妹が亡くなった日から、私は時間があるときはこうして出歩くようになった。


目的は……


「よう、そこのお姉さん!」


「俺達に一杯付き合ってくれよ」


こういうやつらだ。


「申し訳ないけど、お断りするわ」


「そう言うなよ~」


「すぐそこだからさ。ね?ね?」


私を強引に路地裏へと連れ込む男達。


もちろん店なんかないし、この時間でも営業してるのはラインファイト闘技場周辺くらいだ。


「おら、騒ぐんじゃねぇぞ!」


「おとなしくしてたら手荒なことはしねぇからよ」


舌なめずりしながら、私の胸や脚に手を伸ばす。


「………」


待ってましたとばかりに、私はあっという間に男達を殴り倒した。



「さてと……」


倒れている男の一人を、髪を掴んで顔を上げさせる。


「数年前に起きた事件、知ってるかしら?一人の少女が強姦されて殺された事件」


「ああ?知るかよ!」


ゴキンッ――と、男の腕がおかしな方向に曲がる。


「ぎゃああああっ!!ほんとだ!俺は関わってねぇ!!」


「じゃあ、誰が関わっているのかしら?」


「………」


次は男の脚に狙いをさだめ、拳を振りかざす。


「待てっ!待ってくれよ!」


男は一人の男の名前を言うと、携帯でそいつの写メを見せてきた。


「そいつが関わったらしいってくらいしか知らねぇよ!もう許してくれ!」


「………」


今まで妹をひどい目にあわせたやつを探してきたが、今日やっと一歩進展した気がする。


男の髪を放す。


「ありがと」


私の心を、闇が支配していくのがわかる。


立ち上がって逃げようとする男を何発か殴り飛ばし、気絶しているもう一人の男の顎を踏み砕いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ