第四話 -9
「かなめっ!!」
なずながかなめを抱きかかえる。
「見事だ。破壊するつもりが、ひびが入っただけとは」
見下ろすオロチ。睨むように見上げるなずな。
その間に、
「………」
スッと、巧が割って入った。
「巧……」
「やめておけ、スサノオ。おまえは弱い。オレには勝てねぇよ」
「………いやだ」
「なに……?」
「瑞穂ちゃんを……返せ……!」
「瑞穂……?……ああ、異世界の娘のことか」
「……っ!やっぱりおまえが誘拐してたのか!」
「誘拐?保護と言ってほしいな」
「うるさい!返せ!」
巧がオロチに掴みかかる。
が、首を掴まれ、持ち上げられた。
「がっ……ぐっ……!」
「今は生かしといてやる。返してほしいならもっと強くなれ。オレを倒せるくらいにな」
オロチは巧を投げ捨て、歩き出す。
行き先は……咲のところだ。
「行かせないっ!」
朱伽が立ちはだかり、
「手伝うぜ、朱伽」
静春も構える。
「どけ。おまえらはあの大剣の娘より弱い」
「咲さんは殺させないっ!」
「……うぜぇ」
オロチは一瞬で朱伽へ近づき、風を巻き起こす。
朱伽は弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ぐっ……!」
「手加減してやるのってストレス溜まんだよ……邪魔するなら喰っちまうぞ」
オロチが朱伽と静春を睨みつける。
「あ……あ……」
蛇のようにぎらつく鋭い瞳――それは、静春の戦意を奪うには十分だった。
「……待ち……なさいよ……」
「……あぁ?」
しかし、朱伽は立ち上がった。
「行かせないって……言ったでしょ……」
ふらふらしながらも、オロチへと向かっていく。
「………」
そんな朱伽の目の前に、黒い影が現れた。
「……鈴音……?……邪魔……しないで……」
「あなたを死なせなくないの」
鈴音がオロチへ振り向く。
「私にあなたの邪魔をする気はない。用を済ませて立ち去ってもらえるかしら」
「………」
「………」
しばらく無言が続く。
「……いいだろう」
オロチが咲の横に座り込む。
「咲さんっ!ちょっと!離してっ!」
暴れる朱伽を、鈴音がおさえる。
オロチは、咲の胸元に手をかざし、
「やめてっ!咲さんっ!咲さんっ!!」
咲の身体が大きく跳ね、黒い気が咲からオロチの方へと移った。
「咲さんっ!!」
「心配するな。この女は殺さない。もう用はない。好きにしろ」
オロチが立ち上がる。
「ああ、そういえば」
怯えた目をした静春に話しかけた。
「おまえ、見たことあると思ったら、双子の弟か」
「……っ!りんねを知ってるのか!?」
「ああ、会ったことがある。りんねという名前なのか」
「生きているのか!?それとも……」
「さあな」
「とぼけるなっ!」
静春が弓を構える。
「さっきまでふるえてたくせに、威勢がいいな。ほんとに知らねぇよ」
「りんねはそのKISAみたいに暴走して、クロスアークに連行された。ということは、今回みたいにおまえが関わってるはず。思い出せ!」
そのとき、静春の前に一人の少女が立ちはだかった。
金髪のサイドテール――静春の頭を叩いたあの少女だ。
「ちょっ、何やってんだ!邪魔だよ!」
「……もうやめなよ最宮。あいつには敵わないよ」
「それでも、姉の情報が手に入るなら……!」
そこまで言って、静春はひとつおかしいことに気付いた。
「……おまえ、何でここにいるの?」
ここは立入禁止区域。受付や案内をしている少女が、ここにいるはずがないのだ。
「………」
少女はうつむいたまま答えない。
かわりに、答えはオロチから返ってきた。
「潜入は満足したのか、パルティネ?」
「……うん、まぁ」
少女がオロチの方へと歩き出す。
「……おい、どういうことだよ……?」
「……あたしは、オロチの仲間だから……」
少女――パルティネは、静春の問いに小さくつぶやく。
ハクシラが護符を投げると、黒い霧が発生した。
「オロチ様」
「おう、行くか」
ハクシラとオロチが霧の中へ消えていく。
パルティネも歩を進め、
「嘘だろ……?……行くな……行くなよっ!」
「最宮……さよなら」
静春が止めるのも聞かず、霧が晴れたときにはもう姿は見えなくなっていた。




