表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/171

第一話 -6

夕食後、巧は自室の机に向かって勉強をしていた。のだが……


「………あーー、集中できない」


瑞穂のことが気がかりで、まったくはかどっていなかった。


「……あ、そうだ」


勉強のこと聞くふりしてメールしてみよう。

そんなことを考えながら、スマートフォンに手を伸ばす。


~~♪~~♪


と、同時に着信があった。


「……あ」


画面には『雲雀野瑞穂』の文字。


どちらかといえば電話よりメール派だが、この機会を逃す手はない。

巧は一度深呼吸をし、通話ボタンを押した。


「はい、もしも――」

『助けてっ!』


悲鳴混じりの瑞穂の声に、ドクンッと巧の心臓がはね上がる。


「えっ、瑞穂ちゃんっ!?」


『あの三人組が…きゃあああっ!!』


電話の奥で、ガラスの割れる音や複数の足音、男の声が聞こえ、


「どうしたの!?もしもし!もしもし!!」


スマホを耳から離してしまうほどの大きな雑音の後、通話が切れた。


「……行かなきゃ」


巧はスマホを握りしめたまま、部屋を出る。


と、運悪く母親と遭遇してしまった。


「あら、どうしたの?トイレ?」


「いやっ、何か瑞穂ちゃんが!ちょっと様子見てくる!」


母親の顔が途端に険しくなった。

今にも走り出しそうな巧の腕をがしっと掴む。


「こんな時間に何言ってんの!」


「今電話があったんだ!助けてって!」


「馬鹿なこと言ってないで部屋に戻りなさい!ただでさえ日中瑞穂ちゃんが来て勉強進んでないんだから!」


「そんなことやってる場合じゃ……!」


「今高校2年生なのよ!?大学受験まであっという間よ!?」


「でも――」


「でもじゃありません!こんなことしてるうちにどんどん勉強遅れていくのよ!?」


巧が反論しようにも、母はマシンガンのように次々と言葉を並べる。


「………」


刻一刻と過ぎていく時間。

行動を制限され、話も聞いてもらえず、温和な巧にもイライラがつのる。


そして、


「瑞穂ちゃんと勉強、どっちが大切なの!」


不満が爆発した。


「瑞穂ちゃんに決まってるだろっ!!」


強引に母親の手を振りほどく。


「巧……っ!」


「こんなときに勉強なんてしてらんないよっ!」


めったに聞かない我が子の大声に、母親は驚いた顔で固まる。


その隙に、巧は外へと飛び出した。


「瑞穂ちゃん……無事でいて……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ