第四話 -3
静春の案内もあり、巧達は順調に最上階を目指す。
「ちょっと待って」
静春が、とある部屋に寄り道した。
「ここは?」
「第ゼロ部隊が使ってる部屋だよ」
そう答える静春が、第ゼロ部隊の証である白い鎧を身に付けていく。
「誰かもう一人鎧着て。見張りと入れ替わるから」
「巧」
「え、僕?」
「うむ。かなめでは身長低すぎてまずいじゃろ。わしじゃ胸がきつそうで着れん」
男の悲しい性か、巧と静春の目線がなずなの胸へ。
「……いっ、いいから早く着てよ!」
静春が真っ赤な顔をしながら顔を背けた。
「お?からかいがいのあるやつが増えたのぅ」
つぶやくなずなの顔は、実に楽しそうだった。
白い鎧の二人組が、通路を歩く。
「お、重い……」
一人は巧、
「絶対しゃべらないようにね」
もう一人は静春だ。
やがて、大きな扉の前についた。
そこには白い鎧を着た者が二人。
「交代の時間だ」
静春が言う。
「なに?まだ早くないか?」
「まぁまぁ、代わってくれるならいいじゃねぇか」
「まぁな。早く休みたいしな」
特に疑いもせず、見張りの二人は
「んじゃ、よろしくな」
と、その場を離れた。
数秒後、隠れていたなずなとかなめが走りよってきた。
「うまくいったのぅ」
「下の階も警備厳重だからね。ここの見張りは寝ててもバレないくらい甘いよ」
「適当だなぁ……」
「ただ、この先は第ゼロ部隊すら立入禁止の区域だ。おれも道案内はできない」
巧と静春が、鎧を脱ぐ。
「次の見張りの交代時間がタイムリミットだ。行くよ!」
静春が扉に手をかける。
ガチャン――
「………」
「………」
「………」
「………」
鍵がかかっていた。
「静春、鍵は持っておらんのか!?」
「立入禁止だもん!持ってないよ!」
「ここまできて足止めとは……」
心なしか、下が騒がしくなってきた気がする。
「もしかして……気付かれた?」
「まさか!おれが数年かけて見つけ出したルートで忍び込んだんだ!問題ないはず……」
「静春よ……そんな前から忍び込むつもり満々じゃったのか……?」
「ん……まぁまぁ、そのへんは置いといて……」
足音が聞こえた。誰かがこちらに向かって走ってくる。
「やっぱり気付かれたか……」
「くそ、なんてこった……!」
姿が見える。
揺れるポニーテール。赤い戦闘着。
「朱伽っ!」
「朱伽さんっ!」
「……あれ?」
朱伽だった。
「あ、みんないた」
「朱伽、気持ちの整理はついたのか?」
「うん、大丈夫!……あれ?レオンじゃん」
静春を見て朱伽が話しかけた。
「スカーレットプリンセス……!」
静春も当然のように返す。
「いや、K-ASHだからね」
「む?おぬしら知り合いか?」
「まぁね。ねー」
「お、おう」
静春が朱伽から目をそらして答える。
「しゅか……っていうのか、名前」
「そう。あ、レオンはあたしの本名知らなかったっけ」
「ああ……あ、おれの名前は静春だから」
「ん。改めてよろしく、静春」
握手する二人。静春の頬が赤い。
「静春。おい、静春」
なずなが静春を呼んだ。そして耳打ち。
「おぬし、朱伽に惚れておるな?」
「なっ!えっ!?違っ……!!」
「青春じゃのぅ!」
あっはっはと笑うなずなに、顔を真っ赤にしてわたわたしている静春。そして、頭に『?』が浮かぶその他三名であった。
「行くのはこの扉の先?」
朱伽が指差す。
「そうじゃ。しかし、鍵が――」
ドゴンッ!!という音とともに、扉が開いた。
「………」
「………」
「……え?あれ?蹴っちゃダメだった?」
『開いた』というより、『蹴破った』という方が正しいだろう。もちろん犯人は朱伽だ。
「……やってしまったもんは仕方ないのぅ………はっ!下が騒がしい気がするが、おぬし何かしたんじゃ……?」
「ちょっ……こっそり入ってきたわよ!」
「誰にも見つからずに来れたのか?」
「いや、見つかったから静かに蹴り飛ばしてきた」
「原因それじゃーー!!」
なずなが頭を抱える。
「まったく……潜入した意味がなかろう……」
「まぁまぁ、ささっと行くわよ」
「気付かれたから、時間はあまりないとみていい。急ごう」
朱伽、静春が先に行く。
「なずな……」
「大丈夫じゃ……朱伽には困ったもんじゃのぅ」
「巧、なずな、行こう」
巧達も二人のあとを追った。




