第四話 -2
「あの少年、おそらく咲殿の件に関わっておるな」
「えっ!わかるの?」
「なんとなくじゃが」
「じゃもうちょっと話を……」
「いや、無駄じゃろう。それより、今夜わしらが潜入することを感付かれる方がまずい」
「そうか……」
「なずな、巧、ここ」
かなめの指差す先――そこは関係者以外立入禁止の倉庫部屋だった。
「あいつら、レーヌ・ド・ルージュと関係があるな」
「え?わかるの?」
「いや、勘」
「勘って……」
「きっと何かやらかすはず」
「それも勘?」
「おう」
「呆れた……ちょっ、どこ行くのよ!?」
なにも言わず、少年――最宮静春はその場を去った。
「巧、動いちゃ……だめ……」
「巧、ならぬ……そこは……」
二人の少女が悶える。
「んじゃ……」
巧が両腕に力を込め、
「あっ……ちょっ……!」
「巧っ、待って……!」
「別のとこに隠れなさーい!」
ガシャンッ!とロッカーの戸が開き、中からなずなとかなめが飛び出した。
ここはクロスアーク本部の倉庫部屋。
ここに隠れて、夜になったら行動開始する作戦だ。
二人がロッカーの中へ慌てて戻っていく。
「馬鹿者!誰かに見つかったらどうするんじゃ!」
「だからって同じとこに隠れなくったって……せまいでしょ!」
「二人とも、小声じゃないと見つかる……」
「………」
「………」
「なずな、胸が邪魔」
「なーーっ!?かなめ、おぬし胸が小さいからって!」
「なずな、しーーっ!」
「ぐっ……」
夜までは、まだまだ長い――
「はぁ……」
「なんですか、阿坂。ため息などついて」
「咲さんのことさぁ、俺達も行った方がいいんじゃねぇかと思ってさ……」
「ですが、朱伽さんを放っておくわけには……」
「わかってるよ!だけど――」
そのとき、
「呼んだ?」
扉が開き、朱伽が現れた。
シャワーを浴びてきたのか、髪が濡れている。
「朱伽!」
「なによ?」
「朱伽さん、もう大丈夫なのですか?」
「うん……いつまでもヘコんでらんないから」
「朱伽……よかったぜ、元気になっ――ぶっ!」
朱伽が阿坂の顔に何かをぶつけた。
「……パジャマ?」
「あんた、あたしが帰ってくるまでにボタン直しといてよね!」
「え?」
「当たり前でしょ、あんたがやったんだから」
「阿坂……朱伽さんに何をしたのですか……?」
「なんもしてねぇよ!はいはい、直しときますよ!」
そっぽを向きながらも、阿坂の顔は明るかった。
「朱伽さん、どちらへお出かけですか?」
「秘密」
「朱伽のにおい……」
「何嗅いでんのよヘンタイッ!!」
夜――
ロッカーがそっと開かれる。
「ぷはぁ」
「いやぁ~、やっと解放されたのぅ」
「暑かった……」
三人とも軽く汗をかいている。
「だから二人とも別の場所に隠れろって……」
「一緒の方が、楽しい……」
ぐったりとしている巧に、かなめが手のひらで自分の顔をあおぎながら答えた。
「よく言えたもんじゃのぅ巧。わしらの胸やら足やら触りまくったくせに」
「わざと触ったわけじゃないよ!」
「あ、触ったことは認めるんじゃな?」
「二人とも、もうちょっと静かに……」
かなめが二人を注意する。
「そうそう、見つかっちゃうよ」
「あ、ごめん」
「すまぬ……って、おいっ!」
気付くと、あの少年が立っていた。
「もう見つかってしもうた!」
「……!」
かなめが無言で戦闘態勢に入る。
「ちょっとタンマタンマ!おれは邪魔する気ないって!」
「なんじゃと?」
「レーヌ・ド・ルージュを助けようとしてるんでしょ?協力しようと思って」
「……なぜクロスアークのおぬしが協力する?」
「おれにはおれの目的がある」
少年の目は、笑っていない。
「……よかろう。わしらより内部に詳しいじゃろうしな」
「なずな、本当に大丈夫?」
「うむ。まずは咲殿のことが最優先じゃ。わしはなずな。この二人が巧とかなめじゃ」
「おれは最宮静春。よろしく」
なずなと静春は、握手を交わした。




