第一話 -5
「ここだと思うんだけど……」
瑞穂は独り言をつぶやきながら、『立ち入り禁止』という看板がぶら下がっているロープをまたぐ。
もともと周囲が閑散としていることもあって工事現場内は静かで、高く積まれた砂利の山、ほったらかしにされた鉄骨やプレハブ小屋など、全てのものが不気味に感じた。
月の光が周囲を照らしてくれているのが救いか。
瑞穂は出来る限り静かに足を進める。
「よう、雲雀野ぉ」
「っ!?」
不意に後ろから声をかけられ、瑞穂はびっくりしながらも振り向く。
そこには大内、斎藤、小林の三人が立っていた。
「あんた達、また巧ちゃんに何かする気でしょ」
瑞穂がキッと睨み付けるが、三人はにやにやと笑っている。
「何もしねぇよ」
「さっき聞いたんだからね!巧ちゃんを呼び出したとか何とかって」
「ああ、思った以上にあっさりひっかかったな」
笑いながら、三人はゆっくりと瑞穂との距離を縮める。
「用があるのは雲雀野、おまえだよ」
「俺達の邪魔するとどうなるか、しっかりと教えてやる」
「……っ!」
身の危険を感じた瑞穂は、工事現場の奥へと走った。
工事現場の周囲は塀に囲まれており、出入口は先ほど入ってきたところしかない。
しかし、あの三人が出入口の方に立っているため、まずは工事現場の奥へと逃げ、隙を見て抜け出すしかない。
様々なものがごちゃごちゃとしている分、いくつか隠れられる場所があるのが不幸中の幸いか。
「小林は出入口に立ってろ!斎藤、二手に分かれるぞ!」
じわじわと追い詰めるのを楽しむかのように、大内はゆっくり歩を進める。