第三話 -13
「いててててっ!年寄りには優しくせぃ!」
「同い年でしょ……」
巧がなずなの傷を消毒する。
「かなめは?」
「ボクは治った」
「早っ!」
「しかしクロスアークの連中、さすがじゃのぅ」
あのとき、なずな、かなめ、朱伽の三人で戦いを挑んだのだが、勝つことはできなかった。
とりあえず咲達のマンションに逃げ帰ってきたのだ。
「連行されなかっただけマシだろ」
阿坂が呆れながらつぶやく。
「朱伽ならともかく、君達もやるとは……」
「わしらにはわしらの都合があったからの」
奥の部屋から、三森が出てきた。
「お、朱伽の様子はどうだ?」
阿坂が問う。
「だいぶショックを受けてますね。ふさぎこんでますよ」
「そうか……ところで……あんたは誰だよ!?」
「……?」
阿坂の叫びに、黒衣の少女が首をかしげる。
「む?朱伽と一緒にいたから友人かと思って連れてきたんじゃが」
「私は連れてこられただけよ」
「知らない人についてきちゃダメ!」
「敵ではないつもりだけど。あ、名前は鈴音よ」
「ぐ……」
黒衣の少女の落ち着きぶりに圧倒されたか、阿坂も素直に自己紹介。次々と全員が自己紹介をした。
「で、これからどうすんだ?」
「もう夜遅いですし、皆さん泊まっていってください」
「いや、そうじゃなくて!咲さんや朱伽のことだよ!」
ここで天然ボケ発揮するな!と、阿坂が三森にツッコむ。
「わしらが行こう」
「どこに?」
巧が問う。かなめも同じことを聞きたいのか、なずなを見つめている。
「清立区にあるクロスアークの本部じゃ。明日移動して、夜忍び込む」
「……マジで?」
「マジじゃ」
さすがに阿坂や三森からもストップの声がかかったのだが、
「世話になったこともあるが、わしらにも目的があってのぅ」
オロチの思念――
巧は、なずなが言っていたことを思い出す。
「……わかった。行くよ」
「おいおい、マジか。本部だぞ?」
おまえ弱そうなんだが……という目で阿坂が巧を見る。
「僕強くないけど……なずなとかなめの足を引っ張っちゃうかもしれないけど……やらなきゃいけないことがあるから」
巧は、阿坂を見返した。強く、まっすぐに。
「……ふん、言うじゃねぇか。じゃ、さっさと寝て明日に備えな」
おやすみ、と言って阿坂が席を立った。




