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第三話 -10

「………」


「………」


言葉が出なかった。


咲が優勢に見えたのは、最初の十数秒のみ。

その後は、試合というのも躊躇われるようなひどい展開だった。

歓声も自然と消えていく。アナウンサーすら何もしゃべらない。


咲の右腕の骨は折れ、左腕は血だらけで、立っているのがやっとだ。さっきからブラズの攻撃を避けることすらできなくなっている。


「な、なんで試合止めないの?」


夢中になっていた巧も、さすがに我に返る。


「咲殿はまだ闘う意思を示しておる。気を失うか降参すれば終わるんじゃが…」


「……っ!」


突然、朱伽が立ち上がり、帽子を取って、


「咲さんっ!もういいよ!降参しようよっ!!」


叫んだ。

正体がバレるとか言っている場合じゃない。まずはこの試合を終わらせないと……


その声は静まりかえった場内に響き渡り、咲の耳にも聞こえたはずである。


しかし、咲はブラズを睨み付けた。


「咲さんどうしてっ!?」


そんな咲を振り回し、地面に叩きつけ、拳を振り上げるブラズ。


「……っ!」


朱伽の姿が、観客席から消えた。




ブラズの拳が地面に突き刺さり、少し離れたところに咲を抱えた朱伽がいた。


突然の乱入者に場内がざわめく。


「おう、いいスピードじゃねぇかスカーレットプリンセス」


ブラズが楽しそうににやりと笑う。


「あんた……今殺そうとしたわね……?」


「ああ、もう飽きたんだよ。だが、その女がやめようとしねぇ。なら、殺しちまった方が早いだろ」


「………」


「何だ?今度はおまえが相手してくれんのか?いいぜぇ。レジェンドなんてチャンピオンとしか戦えねぇから暇でよぉ」


朱伽が構える。


スッと――

黒い影が朱伽を遮った。


新たな乱入者。

それは黒いゴスロリな服装の少女だった。長い髪も黒く、肌の白さを際立たせているようだ。


「落ち着きなさい、K-ASH」


「だれ?邪魔しないで」


「あなたは闇に堕ちてはいけない」


「はぁ?」


「おう、なんだか知らねぇがごちゃごちゃ言ってねぇで二人ともかかってこいよ」


そのとき、朱伽の横に人影が。


「咲さん!」


「………」


「もうこれ以上は……っ!?」


咲に手を伸ばす。

が、何かに気付いたように朱伽は手を止めた。

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