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第三話 -9

朱伽の試合後しばらくして、アナウンスが始まった。


『さて、次が今日のラストバトル!レーヌ・ド・ルージュ「KISA」が、レジェンドに挑戦です!そろそろ試合開始予定ですので、みなさん席へお戻りくださ~い!』


「ん?レジェンド?」


「そ、レジェンド」


巧の疑問に答えたのはなずなでもなく、かなめでもなく、朱伽だった。


「となり、いい?」


巧の返事を待たず、朱伽が半ば強引に隣に座る。

ベンチ状の観客席はすでに埋まっており、さらに一人増えたもんだからかなりきつきつだ。巧の左側はなずなと密着し、右側は朱伽が遠慮なくくっついてくる。


「わ、ちょっと……」


試合後、急いでシャワーを浴びてきたのだろう。朱伽の髪はまだ濡れていて、ふわっと良い香りがする。

変装のつもりなのか、髪は束ねずにおろしており、帽子を深くかぶっている。もちろん服装は試合のときに着ていたものではない。


「レジェンドってのはね――」


巧と朱伽の顔の距離も近い。

頬を赤らめている巧の心境などお構いなしに、朱伽は話し出した。


「チャンピオンのさらに上の称号よ。一定期間チャンピオンの座を守るか、レジェンドの称号を持つ者を倒すか……どちらかでレジェンドになれるわ。ただ、レジェンドに挑戦できるのはチャンピオンのみなの。今のレジェンドは二代目だったかな」


『みなさん、お待たせいたしました!』


アナウンスの声に、場内が大歓声に包まれる。


『今夜、レーヌ・ド・ルージュがレジェンドに挑みます!!さあ始めましょう!紅の女王KISA、登場です!!』


先程の朱伽のような派手な演出。

赤を基調とした服で、今日はサングラスをかけていない。


「咲さん、本気ね」


朱伽がつぶやく。


「咲さんがサングラスしてるのはね、顔を隠すためでもあるんだけど、視界を悪くして相手にハンデをあげる意味もあるのよ。サングラス外すなんてめったにないんだけどね」


有名な選手は、特にこの街では有名人扱いされるため、私生活にできる限り影響でないように顔を隠して試合に出ることが多い。


「ちなみに、あたしの覆面も顔を隠すためのものよ」


「試合前バレておったがのぅ」


「う……」


『さあ、最強の力を見せてくれ!レジェンド、ブラズの登場だ!!』


アナウンサーが叫び、現れたのは一人の大男。

鍛えあげられた身体。ギラつく眼光。伸びた髪やひげがライオンを思わせる。


「あいつが……レジェンド……」


朱伽がつぶやく。


「なんじゃ?見たことないのか?おぬし選手じゃろう」


「レジェンドの出番ってのは、チャンピオンが挑戦するときぐらいよ。でもそのチャンピオンも下位からの挑戦を受けなきゃなんないし、レジェンドなんてめったに出てくる機会ないわよ」


そういう朱伽の目線は、ずっとレジェンドの男、ブラズを見ている。


「あいつ、強い……咲さん、がんばれ!」


祈る朱伽。試合が始まった。

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