第一話 -4
夜の街――
三人の学生がいた。
放課後、巧にからんできたあの三人組だ。
周囲への迷惑など考えるわけもなく、我が物顔で歩道を歩く。
「これからどうするよ?」
三人のリーダー格、大内が二人に声をかける。
「俺もう金使いきっちまったよ」
「今の時間じゃ獲物もいねぇしなぁ」
そう応えたのは斎藤と小林。
獲物というのは、もちろんお金を巻き上げる相手である。
「ちっ、んじゃ今日は帰るか」
「ん?……なぁ、あれ」
帰路につこうとする大内を呼び止める斎藤。
「あそこにいるのって……」
斎藤が指差す方にはファストフード店。
その窓際の席に……
「……あ?雲雀野か?」
塾の帰りだろうか。
ジュースの容器にささったストローをいじりながら、瑞穂が1人でぼんやりと座っていた。
「……お、いいこと思いついたぞ」
大内がにやりと笑う。
「放課後の仕返しに、ちょっと脅してやろうぜ」
大内は二人の肩を組み、小声で何か話しながらファストフード店へと向かった。
「はぁ~…」
塾帰りの瑞穂は、ジュースの容器に入っている氷をストローでいじりながら、大きくため息をついた。
「普段なら家に帰ってのんびりしてる時間か……
どうしようかな……駅の方にマンガ喫茶ってあったかな?一晩くらいならそこで……」
そんなことを考えていると、ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
「……空島……呼び出したんだよ………工事現場……立ち入り禁止の……」
声のする方を見てみると、そこにはあの不良3人組が。
「マジで?あいつ、ほんとに来るのかよ?」
「雲雀野も来るって言っといたからな。絶対来るだろ」
あいつら、また巧ちゃんに何かする気ね……立ち入り禁止の工事現場って――
瑞穂は思い当たる場所までの道のりを考えつつ、3人組への苛立ちを隠して静かに席を立った。