第三話 -2
「なずな」
「なんじゃ?」
「なんで最初にこの区なの?」
「富士取区にはコロシアムがあってな。『ラインファイト』という格闘大会が毎晩行われておる。それに参加するために、全国から強いやつらが集まってくるんじゃ。まぁおかげでちと治安が悪いんじゃがな。朝早くに出発して、仲間を見つけて、遅くならないうちに帰る…………つもりだったんじゃが……」
なずなが、巧とかなめをゆっくりと見る。
「……」
「……」
ジト目の二人。
「よ……夜八時前に電車がなくなるとは思わなかったんじゃ!つーかなんじゃこの終電の早さは!?」
「富士取区は治安悪いから、夜あまり出歩かないように終電早い」
「かなめ!知っとったら早く言えぃ!」
「言ったけど、なずな聞いてなかった」
「うっ……た、巧!おぬしが早く仲間を見つけんから!」
「ガラ悪い人だらけで、声なんてかけられないよ!つーか、逆ギレ!?」
「うう………す、すまぬ……」
なずなが、やっと素直に謝る。
「とりあえず、ひたすら歩けば深夜には帰れるじゃろうが……」
そう言いながら、なずなが構える。
「……?」
同じタイミングで、かなめも構えた。
「どうしたの?ふた――」
「こんばんは~」
巧が言い終えるまえに、男の声が聞こえた。
「なんか楽しそうだったから声かけちゃったんだけどさぁ」
見知らぬ男だ。
ラインファイトの出場者だろうか。ガタイが良く、強そうに見える。
「兄ちゃん、両手に花かい?もてるねぇ」
ゆっくりと近づいてくる男。
「二人とも、俺達に貸してくれよ」
「……たち?」
気づくと、巧達を囲むように十数人の男達が立っていた。
「いつの間に……!?」
巧の足がすくむ。
「聞いたことがあるのぅ」
なずなが口を開いた。
「ラインファイト参加者の目的は、ほとんどがファイトマネー。参加したものの、まったく勝てぬ『負け犬』どもが、こういう賊まがいのことをやっとるそうじゃ」
「負け犬……だとぉ……?」
男達の顔が、みるみる険しくなっていく。
「上等だ、女ぁっ!!」
「かなめ、油断するでないぞ。巧、どこかに隠れておれ」
お互いに戦闘準備が整い、
「かかれぇ!!」
男の声を合図に、全員が地を蹴った。




