番外編 麒麟-6
「……っ!」
ボクが目をさましたとき、そこは夜の病室だった。
「……?……?」
ベッドに横たわったまま、わけもわからず状況確認。
寝ながら泣いていたらしい。手や頬には少し砂がついている。胸の苦しさは……ない。
「お、目をさましたか」
ベッドの横から声が聞こえ、そこには見知らぬ女性がいた。
「あ、びっくりさせてすまんの。強い力を感じて来てみたら、おぬしが転がり落ちておったんでな。とりあえずベッドに戻したんじゃが……砂遊びでもしておったのか?」
あっはっは~と笑う女性。
……新しいナース?……でもどこかの学校の制服みたいな服装してる。
「しかし、死に際にそれほどの力に目覚めるとはのぅ。時期が時期ならおぬしがスサノオだったかもしれぬな」
「……?」
「ん?気づいておらんのか?おぬしは五行の力に目覚めたんじゃよ」
五行。知ってる。
十年前の天変地異のあと、多くの人が突然使えるようになった力。
それが、ボクに……?
「なぜ部屋に砂があったのかは知らんが、それがきっかけのようじゃな。おぬしは『土』の力じゃ。それも、死を食い止めるほどの強力な」
「え?」
「やはり自分でわかっておらんかったか」
「……?」
「おぬしは死ぬはずじゃった。何の病気かはわしは知らぬが」
……それは理解できる。ボクは突然の胸の苦しさに襲われて、そのあと……
「じゃが、そのとき五行に目覚めた。おぬしは無意識にその力を治癒に使うことで、健康な状態を保っているのじゃ」
「……」
つまり、五行に目覚めたからまだ生きてるってこと……かな。
手についたままの砂を見る。
「その砂がなかったら、おぬしは目覚めぬままだったじゃろうな」
ボクは……助けられた。生きろと言われた……
「で、わしがここにいる理由じゃが」
「え?」
女性が真剣な顔になる。
「単刀直入に言う。わしに力を貸してほしい。オロチを倒す」
オロチ。
天変地異の後に現れて、世界を征服した人。
「そんな強い人を相手に……?」
「やらねばならぬ。じゃが、わしだけでは勝てん。おぬしの力が必要じゃ。助けてはもらえぬか?」
「……」
なぜだろう?
せっかく助かった命なのに……とかいう思いはまったくなかった。
初めて誰かに必要とされていると感じたからか、それとも……
「わかった」
「すまぬ。恩に着る」
そう言いながら土下座する女性。
ボクはどうすればいいかわからず、あわあわした。
「なずなじゃ」
「……?」
「わしの名前じゃよ。山田なずなという。よろしく頼む」
手を差し出してくるなずな。
「津薙……かなめ」
ボクはその手を握った。
「かなめよ、ひとつ聞いてもよいか?」
「……?」
「なぜ病室に砂なぞ持ち込んどるのじゃ?」
ボクは男の子のことを話した。
「なるほどのぅ」
「その子は……その子の名前は――」
なずなは、良い名じゃと言って微笑んでいた。




