番外編 麒麟-2
ある日、病室の扉がノックもなしに開かれた。
「……?」
「………」
ひょこっと顔を出す、まだ小さい男の子。パジャマ姿だから、入院してる子だ。
部屋を間違えたんだろうかと思ってたら、
「えへへ」
そのまま病室に入り、ベッド横のイスに座って、持っていたノートにお絵かきを始めた。
「………」
どう対処すればいいかわからない。
おろおろしてると、男の子はノートを見せてきた。
「おねえちゃん!」
そこに描かれてたのは、長い髪の人。たぶんボク。
「あ……うん……」
男の子は満足そうに笑い、そのまま部屋を出ていった。
「………」
なんだったんだろう?
次の日から、その子は毎日きた。
毎日何かの絵を描いて、ボクがほとんど話さなくても勝手に適当な話をしゃべり、満足げに帰っていく。
「ぼく、海がすきなんだー」
「へぇー……」
「たんいんしたら、海つれてってもらうの!」
「うん……」
『たんいん』じゃなくて『退院』だと思ったけど、別につっこみはしなかった。
「おとうさんがねぇ、海の砂もってきてくれたんだよ!」
「うん……」
「おねえちゃんにもわけてあげるー!」
そう言って立ち上がる男の子。
「え……いらな――」
そのまま走り、
「い………」
ボクの返事も聞かず、男の子は病室から出ていってしまった。




