番外編 麒麟-1
白い天井――
白いカーテン――
白いベッド――
殺風景な部屋――
何も変わらない。
小さい頃に病気になり、それ以来、これがボクの毎日になった。
病気の名前は……忘れた。
知らなくったっていい。
現代の医療では治せず、出来るのは病気の進行を遅らせる薬を飲むことと、安静にすること。いずれボクは死ぬ。その現実は変わらない。
両親は十年前の天変地異で行方不明。
二人がしっかり貯金してくれてたおかげで、入院費とか生活費とかは困ってない。無駄遣いはできないけど。
歳の離れた兄も十年前から連絡がとれない。とても頭がよくて、ボクに効く薬を作るんだって言って、薬関係の研究所で働いていた。
妹はこの町に住んでるはずだけど、めったに来ない。
きっとボクを恨んでるんだろう。この病気のせいで、両親はボクにつきっきり。妹は思いっきり甘えることができなかったみたいだし。
いつも一人。
さみしい?
わからない。
だって、それがボクの日常だから。
ときどき思う。
なんでボクは生きてるんだろう?
入院して、薬飲んで、なんでボクは死に抵抗してるんだろう?
どんなに頑張っても病気はどんどん悪くなるわけで、いつも一人で何もしていないんだし、今死んだっていいんじゃないか?
そんなこと考えながら、とりあえず薬を飲む。




