第二話 -19
「この部屋だ」
夕食後、お風呂まで入らせてもらった巧は、なずなの父親に連れられて神社の方に来ていた。
外から見たよりも中は広く、空いている部屋がいくつかあるらしい。案内されたのはその中の一室だ。
「もともとは客室とかではないんだが……こんなご時世だからね。今は住む場所がない人を泊めるために使っているんだよ」
「いや、でもご飯やお風呂をいただいた上に泊めてもらうなんて……」
「遠慮しなくていい。うちはそういう人助けのための援助金を国からもらっている。ただし、ここにいる間は神社の手伝いをお願いすることになるがね」
「あ、はい。それくらいは。……んじゃすみませんが、お世話になります」
「うむ。ではさっそく明日から手伝いを頼むよ。今日は早く寝ておきなさい」
「はい、お休みなさい」
父親が部屋を出ていく。
あらためて部屋を見渡してみる。
広さは六畳ほどだろうか。小さなテーブル以外は何もない和室だ。
押入れを開けると、布団と寝巻が入っていた。
「……寝るか」
寝巻に着替え、布団を敷く。
――トントン
ふすまがノックされた。
「はい!」
「そんなにかしこまらなくてよいぞ。わしじゃ」
入ってきたのはなずなだった。
風呂上がりだろうか。髪は濡れており、巧のよりもだいぶ女の子らしい色使いの寝巻を着ている。
もちろん、胸元を大きくあけ、片足の太ももが見えるほどに着崩しているが。
「ちょっ……ちゃんと着てよ!」
「む?きっちりするよりこの方が楽でのぅ」
気にする様子もなく、なずなは布団の上にあぐらをかく。
「さて、情報交換しようではないか」
「え?」
「朝、おぬしトイレに行くといっていなくなりおったからのぅ」
なずながジト目で睨んでくる。
「あー……ごめん」
「まぁ、かまわん。またこうして話す機会があったからの」
そう言いながら、なずなは一枚の紙を巧に渡した。
「?」
「この周辺の地図じゃ。どこに何があるかもわからんじゃろ?」
巧が地図を開く。
と、なずなも覗きこみ、いろいろと説明をしてくれた。
「ここが今いる神社じゃ。ここはわしが通ってる学校。これが駅じゃな。まぁ隣町までしか行けんが。で、この辺りは店も多くて……」
まじまじと地図を見つめる巧。
突然、
「あーーっ!」
「ひゃっ!な、なんじゃ!?」
巧が驚いた顔で地図を指差す。
「柳町だ!」
「……知っとるわ」
「いや!僕の住んでた柳町とそっくりなんだ!」
「なぬ?」
ふと、坂の上から見た風景を思い出す。
「……そうか!あのときの違和感はこれだ!」
「は?」
「地形は違うのに、学校とか駅とかの位置がまったく同じなんだ!」
「ちょっ……まずは落ち着け巧」
「え?あ、あぁ……ごめん」
いつの間にか立ち上がってた巧は、我にかえってちょっと恥ずかしそうに座りなおした。
「ふむ……まずはこの世界の過去から話した方がよさそうじゃな」
そう言うと、なずなはゆっくりと話し始めた。




