第二話 -18
灯りの少ない道を歩くこと数十分。
最後に小高い丘の階段を上がる。
そこには神社と隣りあって民家があった。
「すまん。恩にきるぞ、巧」
「ん、大丈夫だよ」
「あ、ちょっと待っておれ」
「?」
玄関の前まで来て、なずなはワイシャツのボタンをしめ、着崩していた制服を直す。
そして、
「ちとびっくりさせるかもしれんが、平常心で頼むぞ」
巧に声をかけ、
「ただいま~」
と、玄関を開けながら声をかけた。
「おかえり~」
すると中から返事が聞こえ、一人の女性が出てきた。なずなの母親だ。
「あら?そちらは?」
母親は巧を見ながら、なずなに問いかける。
「転校生。急なことでまだ住むとこが決まってないみたいで……」
「そう……大変だったわねぇ」
なぜか母親は、今の会話だけで納得したようだ。
しかし、巧にはそれよりも気になることがあった。
――なずなの口調が変わった!?
先程までの老人っぽい口調ではなく、年齢相応の話し方になっている。
「お名前は?」
「え?あ、空島巧です」
母親からの問いかけに、他のことを考えていた巧は多少慌てつつ答える。
「まずはご飯にしましょうか、巧くん」
「え?」
「今は他に泊まってる人もいないし、なずなの友人ならなおさら無下にはできないでしょ?一緒にご飯食べましょ」
「え、いやそんな――」
「ありがと、ママ!」
「ママ!?」
「ほら、行くよ巧くん。キッチンに案内するから!」
「くん!?わ、ちょっと……!」
とまどう巧の手を強引に引っ張って家に上がらせるなずな。
「……平常心で頼むと言ったであろう……!」
小声で怒られながらも、巧はなずなの家族と共に夕食をいただくこととなった。




