第二話 -13
身長は3メートル近くあるだろうか。
大木のように太い腕や足。筋骨隆々の身体を持つ大男があらわれた。
「なっ……こやつは……!?」
その人間――と呼んでもいいのだろうか――を見て、なずなが叫ぶ。
「巧!撤退じゃ!」
「え、でも……」
「今のわしらには無理じゃ!場所も悪い!早く!」
「手負いの女の子を連れて、この不死身のゴーレムから逃げ切れますか?」
「瑞穂ちゃん……」
クシナダと名乗った少女は、感情のこもってない淡々とした言葉を投げかける。
「さようなら」
クシナダは霧の中へと消えた。
ゴーレムがゆっくりと歩を進める。
「巧っ!かなめを連れて逃げよ!」
「え、なずなは?」
「時間を稼ぐ!急げ!」
「わ、わかった!」
なずなに従い、巧はかなめに走りより、ぼろぼろのかなめを背負ってその場を離れる。
「……さてと、今の力でどこまでいけるかのぅ」
つぶやきながら、さきほどと同じ黒色の球体を出現させる。
「グオオオオォォォッ!!」
ゴーレムの雄叫びが大気を震わせると同時、
「いけっ!」
黒球がいっせいに襲いかかった。
次々と命中する黒球。
いや、ゴーレムに回避の意思はない。ただゆっくりと歩いてくるのみ。
黒球はゴーレムに当たっても弾けるだけで、ダメージを与えている様子はない。
「やはり効かぬか」
そういうなずなは、黒球の攻撃を隠れみのにしてすでにゴーレムの懐に入り込んでいた。
「なら……」
右の手刀に力を集中。
黒い光が集まり、剣を形作る。
「これでどうじゃ!」
それを、ゴーレムの胸元へと深く突き刺した。
「いくら貴様でも、心臓をつらぬ――」
なずなの全身を強い衝撃が襲った。
ゴーレムがそのでかい拳で殴りつけたのだ。
横へ弾き飛ばされ、民家の壁に打ちつけられる。
「がふっ!……なっ……!?」
見ると、ゴーレムの胸の傷はみるみるうちにふさがっていく。
「まったく……どうしろというんじゃ」
ゴーレムがなずなの身体を無造作に掴み、持ち上げる。
「ぐっ……あっ…が…ああああぁぁっ!」
気を抜くと握りつぶされそうな握力に、骨がきしむ。
ゴーレムは、なずなをまた別の民家へと叩きつけた。




