第二話 -11
少女の爪が襲いかかった。
ただし、かなめにではない。
何もない場所に……正確には、先ほどまでかなめがいた場所に、だ。
「……あれ?まだ動けたのかよ……」
攻撃を避けられるとは思ってなかった少女が、忌々しくつぶやく。
「……?」
かなめは頭に?マークを浮かべ、ただ立っていた。
「うっ……」
唐突に、めまいが巧を襲う。
が、かなめと少女、二人とも動きを止めた今を逃す手はない。
戦うことはできないが、説得なら……!
「もうやめようよ!」
巧が叫んだ。
「……ちっ」
舌打ちをする少女。
巧はまっすぐ少女を見つめた。
「こんなことしちゃダメだよ」
「はぁ?」
「人を傷つけるのは悪いことなんだ。わかるでしょ?」
巧が、少女を落ち着かせるかのように優しく話しかける。
「……はぁ」
対して、少女はイラついた様子でため息をひとつすると、巧みを睨み付けた。
「バカな人間を処分しただけよ」
「え?」
「生きてる価値のない人間だから裁いたの」
「価値のない人なんていないよ。それに、人の価値を勝手に決めるだなんて……」
「わたしじゃないよ。神様が決めたの」
「え?」
「オロチ」
「っ!」
聞き覚えのある名前に、巧はドキッとした。
病室でなずなから聞いた話。
その中に出てきた「オロチ」という名の支配者。
しかし、目の前の少女からもその名が出てきた。
何だ、この世界は?あの話はただの作り話じゃなかったのか?
混乱する巧。
少女は話し続ける。
「価値のない人間なんていない?
十年前の天変地異で生活が一変したって人間は罪を犯し続けている。そんなバカな生き物に価値なんてあるわけないでしょ!」
爪を巧に向け、構える少女。
「キミにも価値なんてないんだよ!」
少女は地面を蹴った。




