第二話 -7
誰もいない街を、なるべく静かに進む巧。
しばらくすると、男性の怒鳴り声のようなものが聞こえた。
「……?」
声のした方へそっと近付く。
そこには……
「……っ!」
うっかり声をあげるところだった。
そこにいたのは一人の男、先ほど赤ちゃんを助けた少女、そしてその2人を取り囲む数匹の犬の化け物――ケイム・エラーだった。
巧は物陰に身を隠した。
ケイム・エラーに襲われた昨晩のことが頭をよぎり、全身が震える。
2人を助けるという考えなど一切わいてこない。
大事なのは、どうやってここから離れるか。
見つかれば終わりなのだ。
「こんなとこで死ねるかよ!」
そのとき、男が叫びながら巧の方へと走った。
すぐさまそれを追う1匹のケイム・エラー。
「ぐあっ!」
そんな男のうめき声が、横から聞こえる。男は、巧の姿が見えるところまで移動してしまったのだ。
ケイム・エラーの鋭い爪におさえこまれ、地面にへばりつく男。
この位置はやばい!――
巧は移動しようとするが、そのまえに男と目が合ってしまった。
「助けてくれっ!頼むっ!」
「ちょっ……!」
男が叫んだことにより、男を捕らえているのとは別のケイム・エラーが巧の存在に気付き、ゆっくりと近付いてくる。
鋭い眼光、よだれを滴らせている牙、低い唸り声――恐怖で身体が固まる。
「あ……あ……」
巧はとっさに足元にあった木の棒を拾った。
これで倒せるとは思っていないが、何もないよりはマシだろう。
歯がガチガチと鳴り、手の震えが止まらない。
しかし、ケイム・エラーは容赦なく襲いかかってきた。




