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第二話 -6
息を切らせた女性が、巧に駆け寄る。
「ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」
赤ちゃんの母親のようだ。
巧は赤ちゃんを母親に渡し、
「いえ、助けたのは僕じゃなくて――」
そのとき、辺り一帯に悲鳴が響いた。
「っ!?」
人々は何か場所を確認すると一斉に走り出し、すでに周りにはほとんど人影が見えない。
「何だ何だっ!?」
「裁き……」
キョロキョロする巧に、赤ちゃんの母親がぼそっと呟く。
「え……?」
「あ、もしかして裁きの現場に立ち会ったのは初めて?」
「えっと……」
何のことかわからない巧をよそに、母親はいそいそと赤ちゃんをベビーカーに乗せる。
「大丈夫。落ち着いて裁きの現場から離れれば、巻き込まれることはないから」
母親はそう言うと、ベビーカーを押して行ってしまった。
「…………」
訳がわからないまま、とりあえず巧も移動を始め……
早く逃げなさい。死にたくなければ――
ふと、少女の言葉を思い出した。
足を止め、振り返る。
あの子もちゃんと逃げただろうか?
……いや、あの速さで走れるなら大丈夫か……
でも、あの言葉の意味はいったい……
巧の頭を様々な考えがよぎる。
そして……
「…………」
人々が逃げる方向とは逆に足を踏み出した。
「もしあの子がいなければ僕も逃げればいいんだし……大丈夫大丈夫……」




