表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/171

プロローグ

暗闇の地下道。


天井が崩れないように支えている木の柱はすでに腐っており、役に立っているのかどうか怪しい。カビ臭い淀んだ空気や高い湿度が、来る者を拒んでいるかのようだ。


そんな道を照らすのは、一本の松明。

それを持つのは、黒いローブを着込んだ小柄な人影。

フードをかぶっているため、顔はわからない。


灯りがあるとはいえ薄暗いデコボコ道を、人影はすいすいと奥へ進んでいく。



やがて細い道が終わり、広い空間に出た。


松明の炎が、この空間の中心に位置する小さなほこらを照らし出す。


人影はどこからか銀色の棍棒を取り出すと、祠に向けて振るった。


力いっぱい振るったわけではない。片手で軽く。


それだけで、石で造られている祠は粉々に砕けた。


がらがらと、石のぶつかりあう音が地下空間に響く。


その音が鳴り止まないうちに、


祠があった場所を中心に暴風が吹き荒れた。




砂や小石が巻き上げられ、松明の炎は消え、地下空間全体が軋む。


その中に平然と立つ人影。


フードが脱げ、風に乗って暴れる長い黒髪。

その顔は、まだあどけなさの残る少女のものだ。


目をそらすことなく、暴風に身体を飛ばされることなく、ただ立っている。



風が止んだ。


暗闇に包まれた空間。


そこには先程までいなかったはずの、闇より暗い巨大な影があった。


実体がなく、煙のように揺らめいているが、確かに何かが存在している。


「おはよう。お目覚めはいかがかしら?」


少女は、乱れた髪を整えながら話しかける。


…ナゼ ワシヲ オコシタ?ーー


巨大な影が答えた。

耳で聞き取るのではなく、直接脳内に響いてくるような声で。


「なぜ、ですって?仮にも神を名乗っているんだから、わかっているでしょ?

それとも、まだ寝ぼけてるのかしら」


ワシニ ウゴケト モウスカーー

コノ ヨコシマナル カミニーー


「ええ。他の奴等に動かれては都合が悪いの。私的なことだけど。

それと、邪神に興味はないわ。あなたに言っているのよ、ツクヨミ」


ツクヨミ――

そう呼ばれた影は一瞬動きを止めた。


……ヨカロウーー

ナンニセヨ フウインガ トカレタイジョウハ コノママ ネテイルワケニモ イクマイーー


「よろしく。ほかの封印も私が解いておいてあげるわ」


巨大な影の返答に、少女は満足そうに笑みを浮かべると、一本の木の棒を拾い上げる。


さっきまで松明として機能していた棒だ。


それに手をかざすと、まるで手品のように再び火が灯った。


少女は、先ほどきた道を引き返し始める。


マテ……オヌシハ ナニヤツジャ?ーー


「私?私は――」


少女は足を止め、振り返らずに答えた。


「混沌――」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ