表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

黒虎

 神沢勇が人狼と戦っていた同じ頃、秋月玲奈は黒虎(ブラックタイガー)と戦っていた。

 漆黒の人形の顔は虎であり、黒い体毛が全身を覆っていたが人のように直立していた。


 玲奈は三メートルにも達する相手の巨躯に苦戦していた。

 しかも、秋月流柔術の殺人技が全く効かない。

 パワー不足もあるが、傷を治す再生速度が尋常ではなく、おそらく200キロは超えるかという体重で投げ技を打つのも一苦労である。

 打撃技はほとんど封じられてる感じだし、関節技は跳ね返されるし、防御できるような軽い攻撃もなく、紙一重で相手の攻撃を回避してるつもりでも、玲奈の身体は全身打撲の満身創痍状態になっていた。


「玲奈ちゃん、もう逃げましょう。私が援護するからタイミングを合わせて!」


 公安警察の神沢優はついに叫んだ。

 だが、秋月玲奈は後退を繰り返しつつも逃げようとしなかった。

 分かっている。

 だが、一矢も報いずに秋月流の当主が逃げるわけにはいかなかった。

 

「もう少しです」


 玲奈は後退しながらも、チャンスをうかがっていた。

 神沢優も何かを察したのか、静かにうなづいている。


 黒虎が踏み込んだ瞬間に、相手の懐に飛び込んだ。

 低い姿勢から黒虎の鳩尾(みぞおち)に連打の蹴撃を叩き込み、そのまま背中で黒虎を担ぎ上げ、頭をアスファルトに叩きつけた。


 <玄武落(げんぶおと)し>

 

 秋月流柔術の必殺技のひとつが炸裂する。

 黒虎の頭部が自らの体重で砕け散る。

 が、ここからが恐ろしいところなのだが、頭部があっという間に再生をはじめていた。


 だが、その技はただのフェイントだった。

 何故か、黒虎の身体は無数の刃のようなもので切り刻まれ、大量の血が噴き出し始めた。


 秋月流柔術の裏奥義、<鋼糸(こうし)の舞>である。

 公安警察の特別製の鋼の糸は空母上で戦闘機の機体を受け止めても切れない硬度があった。

 黒虎が再生しても再生しても、無数の見えない鋼糸で無限に切り刻まれ続ける。

 

「神沢少佐、焼き払ってください」


「了解」   

 

 神沢優は火炎放射器で黒虎を焼き尽くしていった。

 さすがの黒虎も焼き払われて塵になれば再生さえできないはずである。


 が、塵が風に舞いながら霧となり、暗黒星雲のダークマターが渦巻きながら形を為していく。

 およそ一分ほどで黒虎が再生した。


「嘘でしょう」


 神沢優の目の前で復活した黒虎は見えないはずの鋼糸を引きちぎった。

  

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ