表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

再生

「……人間、待て」


 神沢勇は肉片となった人狼を振り返った。

 が、それはみるみると再生して、狼の形になっていった。

 白銀の(たてがみ)が月光を反射してキラキラと輝いた。


「あらま、狼に退化?」


 神沢勇は皮肉をいう。

 どうやら、全身を破壊されれば人形には完全に戻れないのか、それとも狼の方が本来の姿なのかは分からなかった。


「人間にしてはなかなかやるな。だが、我を倒すことはできぬ」


 負け惜しみのようにも聞こえるが、確かに不死身の人狼には違いない。


「まさか、不死身の狼と戦おうとは思わないわ。借りは返したから失礼するわ」


 神沢勇は何事も無かったように振り返りもせず、歩き出す。


「分かった。今日は引き分けとしよう」


 狼も追撃する力がないのか、負け惜しみなのか判断はつかなかったが追ってはこないらしい。

 神沢勇は内心、ほっとして足早にその場を去った。






      †






「というわけで、怜の仇は討ったからね」


 神沢勇は翌日、怜の病室で自慢話をした。

 実際、ほとんだ圧勝なのだから大したものなのだが、何となく腑に落ちないものが残っていた。

 それが何なのかまでは分からなかったのだが。


「神沢先輩! 流石です! 天才です! やっぱり女子プロレスは最強ですね」


 大分、怪我も回復してきた怜は大はしゃぎである。


「そうなると、怜も再戦しないといけないわね。今度は頑張るのよ」


 神沢勇はまたとんでもないことを言い出す。

 まあ、勇らしいといえば勇らしい。


「分かりました。すでに玲奈ちゃんに特訓を依頼してます。頑張ります」


「何ですって? どんな特訓なの?」


 興味深げに訊いてくる。


「それは秘密ですよ。必殺技を教わるのです」


 秘密と言いながら、ほとんどばらしてしまっている。

 そこは怜らしい。


「まあ、頑張りなさい。玲奈にもよろしく伝えておくわ」


「了解です。でも、人狼が狼のままなら逆に戦いにくいですね。すばしっこそうだし」


「確かにねえ。そこは、ちゃんと練習すれば何とかなるわ。自分の力を信じなさい」


「そうですね。とりあえず、身体を治して。スクワットなんかはもうはじめてるんですが」 


「その調子よ。あまり無理はしないように」


「はい」 


 神沢勇は天才プロレスラー神沢勇吾(かみさわゆうご)と天才女子プロレスラー神沢恭子(かみさわきょうこ)の子供として生まれた。

 いわばサラブレッドなのだが、あまりに強過ぎて対戦相手を怪我させて以来、不遇の時を過ごした。

 その時も秋月玲奈に助けられていた。


 たぶん、今回も怜にとって救いの女神になるのは秋月玲奈だろうと思うが、その彼女の身に事件が起こっていることをその時の怜は知るはずもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ