黒幕に近付けるかと思ったら始末されるタイプの犯人
もしかしたら、俺は『黒幕に近付けるかと思ったら逮捕後に重要なことを言いかけて始末される役』かもしれない。
とにかく殺したい奴がいる俺は、犯罪コンサルタントを頼ることにした。
経営コンサルたちがバタバタと倒産しているなか、犯罪コンサルはまだまだ健在。なんならフロント企業が上場しているので、経営とてしてもコンサルが成功しているのだろう。
25周年アニバーサリー期間なので、依頼の1killにつきステッカー1が枚貰えるそうで2枚貰った。全5種あるらしく、コンプリートまではまだまだ遠い。
そこまでは良かった。
競合他社がいないせいか、金額は高いしサービスやオプションはあまり無いようだが敷居の高さが気に入った。チャラチャラした気持ちで人は殺すべきではないので。
クチコミの評判も3.7だったし。
ただ、キャッチコピーが【現代のジェームズ・モリアーティ!】という辺りから不安が翳りだした。
現代と言われても。
ジェームズ・モリアーティは架空の人物だ。シャーロック・ホームズの世界の住人なので、どの歴史を遡ってもこの現実世界にジェームズ・モリアーティは存在しない。
このキャッチコピーにしたい気持ちは分かる。犯罪コンサルなんて、ジェームズ・モリアーティみたいなものだ。名前を出したいだろう。
ただ、誰か何か言わなかったの? と思う。
せめての【現代の犯罪界のナポレオン】とかにしてくれれば、モリアーティ的な感じだと分かるのに。
いや、実在の人物の名前を出すのは風評被害になってしまうのか?
犯罪コンサルなのだから、名誉毀損とか気にしないで欲しいが。様々な配慮の結果ならまだ納得できる。
そんな神経質だと言われてしまいそうな些細なことを気になってしまうと、アレコレ気になってしまうというもので。
提供された完全犯罪手順について、どうにも不安になってしまったのだ。
2killプランだからなのか、殺害日が日を跨いでいることが気になった。
人を殺すなんてこと、出来れば1日で終わらせたい。
その日の内に2kill出来ないことはないだろうに。
計画を隅々まで読むと、俺を連続殺人犯のようにしたいらしい。
どうやら、満月の日に人を殺すタイプ。
浪漫の追加オプションを付けた覚えがない。
今どき、月の周期が気になる人も少ないのではないかと思う。満月の日だけ殺人を起こしているなんて気付いてもらえる気がしない。満月に対してたったの2killは……小規模過ぎやしないか?
たった2回、満月の日に殺人が起きたところで気にならないと思う。
いや、気にされては困るのだけど。捕まりたくない。
なんなら警察にバレないレベルの完全犯罪プランが提供されると思っていた。
1kill後、もう1人を殺す次の満月までとかいう謎のクールタイムはなかなか長い。かなりリスクがありそうだ。
そのクールタイム中にまかり間違って捕まってしまったら、もう1人をやりそこねることになる。この場合、本当に良くない。
俺は2人殺すつもりだし、2人分の料金を支払っているのだ。
もし、1kill後2kill前に捕まってしまったら「最後に1本だけ、タバコを吸わせてくれ」ではなく「最後に一通だけ、払い戻しリクエストを送らせてくれ」と言うことになってしまう。
そんなことを言ったら、始末されるだろう。
多分、「払い戻し」辺りで息絶える。そして主人公たちが「ふりだしに戻った……」ってなるんだろう。
誰だよ主人公。
きっと、主人公たちの前に黒幕の現代のジェームズ・モリアーティが登場する時は「我々はコンサルをするのみ。全て、お客様の判断ですから。失敗した愚者に払い戻しだなんて、受け付けておりませんよ」とか言うんだろうと思う。
誰なんだ、主人公。
でも、現代のジェームズ・モリアーティが居るのだから現代のシャーロック・ホームズとか居るかもしれない。
どちらもどの年代にも居なかったけど。
現代のシャーロック・ホームズなら俺の1回目の殺人が満月だと気付いてくれそうだけど、それより薬物で捕まってそうだな。




