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【挿話】オットー・ブラウン騎士団団長 その2


すぐに国王陛下に続いて、クラウス宮廷魔導士長と魔女マルガレーテがフリード様のもとへ駆けつけた。


「医務室に運べ!」


ヴィルヘルム国王の顔は青ざめていたが、それでも迅速に的確な指示を出していく。


「オットー、エレ嬢にも知らせよ!」

「はっ!」


私は急いでフリード様の寝室に向かった。

扉をノックするのも忘れて、そのまま扉を開いてしまう。


我ながら気が動転していたものだ。


「エレ殿! フリード様が! 毒に!」


必死に叫ぶと、エレ殿の顔がきゅっと引き締まった。

黄金の瞳が大きく見開かれる。


ハンスとアンナの顔も真っ青だ。


私はエレ殿を抱き上げ、そのままフリード様のもとへ走った。


幸い、医務室でフリード様は目を覚まされたようだった。


弱々しく瞼を開いた主君が、エレ殿に手を伸ばす。


「エレと話がしたい」


掠れる声だった。


部屋の片隅では、クラウス宮廷魔導士長とマルガレーテ様が小声で何か話し合っている。


「にゃ~ん」

「ああ、大丈夫だ。マルガレーテ殿が調合してくれた解毒薬が効いたようだ。

すまない。エレがいないところでは飲食しない、と決めていたのに」

「なご~」

「分かっている。すまない」


想像していたよりも元気そうな主君の様子を見て、私は安堵の息を深く吐いた。


その時。


「オットー、すまないがサミュエルを連れてきてくれないか? あのまま放置したら可哀相だ」

「はっ、かしこまりました」


あのオウムのことを気に掛けるとは意外だったが、私は急いでサロンへ戻る。


どうやら誰かがオウムが中にいると知らずに扉を閉めてしまったらしい。


私が扉を開けると、オウムは大声で喚きながら飛んできた。


ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ。


そして、そのまま私の肩に着地する。


珍しい。

このオウムは普段、私にはあまり近づいてこないのに。


とはいえ、今はフリード様の方が心配だ。


私は再び医務室へ向かった。

オウムは肩から離れようとはしない。


しかし先ほどのような大きな鳴き声を出さないのは助かる。


とんとん。


「入れ」


扉を開けると、医務室の中にはフリード様とエレ殿だけがいた。

その瞬間、肩の上のオウムがびくりと震える。


「あ、オウムがいるとまずいですよね。外に置いてきます!」


私が慌てて言うと、フリード様は笑顔を見せた。

エレ殿の顔は緊張しているように見える。


「エレは大丈夫だと言ってくれた。構わないよ。ただオウムが騒ぐと大変だから、この鳥籠の中に入れてもらえるかい?」


フリード様の指差す先には、大きな鳥籠が置かれていた。


(いつの間に……?)


怪訝に思いながらもオウムを入れようとすると、ものすごい抵抗をされた。

逃げ出そうとしたので、慌てて拘束魔法を使わざるを得なかった。


普段自由にさせてもらっている鳥だから、籠の中が嫌なのかもしれない。

それでもどうにかこうにか鳥籠の中に押し込み、カチンと扉を閉める。


「それでフリード様、お加減は大丈夫ですか? 何に毒が入っていたのかは判明しましたか?」

「僕のカップの中から発見された。クラウスとマルガレーテが調べてくれている」

「そうですか。エレ殿がいらしてから毒を心配することがなかったのでつい油断しました。大変申し訳ございません」

「ああ、僕はずっとエレに助けられていた。そのために君を危険にさらしてしまったこともあったと思う。ごめんね、エレ」

「にゃ~ん」


甘えるようなエレ殿の鳴き声に、鳥籠の中のオウムが鋭く反応した。


突然、鳥籠の中で暴れ出す。


「静かにしなさい。フリード様、外に連れて行った方がよろしいでしょうか?」

「いや、構わないよ」


フリード様はオウムのことなど眼中にないかのように、エレ殿へ視線を向けた。


その瞳には、愛情と心配が入り混じった色が浮かんでいる。


エレ殿は寝台の上で毛づくろいに余念がない。


そして。


「エレ、僕は本当に君のことを愛しているよ」


突然の愛情の吐露に、私はパニックに陥った。


これは……?


以前、王妃陛下が襲われた時と同じ状況ではないのか?


フリード様が苦しそうにこめかみを両手で押さえる。


「う、うう……痛い。エレ……ごめん」


涙を流すフリード様の顔は、見る見るうちに蒼白になっていく。


その時だった。


フリード様の口の中から、真っ黒いタールのような小さな蛇が飛び出し、エレ殿へ向かっていった。


まずい。


そう思った瞬間だった。


毛づくろいをしていたとは思えないほどエレ殿は素早く動いた。


一瞬で勝負は決まった。


エレ様の右前足が、蛇の体を押さえつける。


そして次の瞬間。


エレ様はその蛇の頭を噛みちぎった。


ちぎられた部分から、どす黒い煙がもくもくと立ち昇る。


「エレ様!」


その時、どこに隠れていたのかクラウスが現れた。


手に持っていたガラス製の容器の中へ蛇の残骸を押し込む。


煙はケースの中に充満するが外へは漏れ出ない。


「や、やったのか……?」


力なくフリード様が尋ねる。


「はい! エレ様、お手柄です! フリード様の呪いの蛇を見事捕らえました! さすが猫です!」


エレ殿はふぅっと大きく息を吐くと


「にゃ~ん」


得意そうに鳴いた。

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