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第3話 「目覚めたら拘束されていた 〜仮面の男の「面接」〜」

寒さと硬さ。

 

それが、私が目覚めて最初に感じた世界の全てだった。


「ん……ぅ……」


重い(まぶた)をこじ開ける。


そこは石造りの冷たい部屋だった。

 

窓はない。


壁に埋め込まれた魔石ランプが、不気味なほど静かな青い光を投げかけている。

 

起き上がろうとして――私は自分の身体が「自由ではない」という絶望的な事実に気づいた。


「え……?」


動かない。


手首と足首が、冷たい金属製の(かせ)でベッドに固定されている。

 

さらに首元には、ひやりとした革の感触。


チョーカーだ。


ただのアクセサリーじゃない。


そこから流れる微弱な電流のようなものが、私の魔力回路を完全に遮断している。


魔力が……練れない。


嘘、これって軍用品クラスの「魔封じのチョーカー」!? 


これ一つ売れば屋敷の屋根どころか、離れまで直せる金額じゃ……


こんな緊急事態だというのに、真っ先にアイテムの市場価格を鑑定してしまうのは、私の悲しき習性だ。

 

でも、すぐに背筋が凍った。

 

魔力が使えない私なんて、ただの非力な小娘。


熊を素手で殴れるのは魔力強化(ブースト)があってこそ。


今の私は、まな板の上の魚よりも無力だ。


「お目覚めかな、お姫様」


部屋の影から、加工された低い声が響いた。

 

例の燕尾服の人物。


顔には真っ白な仮面。

 

その男は、市場で肉の鮮度を確かめるような、冷たく粘着質な視線で、私の全身を舐め回すように見下ろしていた。


「ここは何処ですか!? 私をどうするつもり!?」


私は枷をガシャンガシャンと鳴らして抗議した。

 

けれど、仮面の男は動じることなく、優雅な足取りでベッドの脇へと近づいてくる。


「ここは私の実験室であり、面接会場だ。君には、ある『仕事』への適性があるか、テストを受けてもらう」


「仕事……? やっぱりあのチラシの?」


「そうだ。だが、普通のメイドではない。私の期待に応えられるか、その身体で確かめさせてもらうよ」


男の手が伸びてきた。

 

革手袋に包まれた指先が、私の頬をなぞる。

 

冷たい。


ひどく無機質で、それでいて――ぞくりとするような熱が、背筋を駆け抜けた。


「ひゃぅっ!?」


私が情けない声を上げると、男は仮面の奥で笑った気配を見せた。


「敏感だな。魔力量が多い人間は、五感も鋭敏だと言うが……」


指先は頬から首筋へ、そして鎖骨へと滑り落ちていく。

 

いやらしい手つきじゃない。


まるで肉の付き方や、骨格の強度を確かめるような、冷徹な診察。


それが逆に、私を「モノ」として扱っているようで怖かった。


「痩せすぎだ。これでは見栄えが劣る。もっと肉をつけさせなければ」


「よ、余計なお世話です! これでも最近は一日二食は食べて……」


「黙れ」


男が指をパチンと鳴らす。

 

瞬間、首のチョーカーが赤く明滅し、私の全身に痺れるような衝撃が走った。


「あぐっ……!?」


痛みじゃない。


脳の芯を直接掴まれたような、強制的な浮遊感と脱力感。


「んぅ……っ、ぁ……」


私の口から、意思とは関係なく甘い吐息が漏れてしまう。

 

抵抗できない私を嘲笑うように、男の指が太腿の内側をゆっくりと這い上がってくる。


なぞられた場所から、パチパチと火花が散るような快感が弾けた。


「や、やめ……そこ、だめぇ……っ」


「君に発言権はない。許されるのは、私の質問に答えることと、喘ぐことだけだ」


男は私の耳元に顔を寄せ、悪魔のように囁いた。


「君の名前は? どこの手の者だ?」


「あ、アリア……ベルンシュタイン……ただの、バイト探し中の……令嬢です……」


「嘘をつくな。その身のこなし、ただの令嬢であるはずがない」


男の手が、私の脇腹――私の性感帯であり弱点――を容赦なく責める。


「ひゃあああっ! ほ、本当です! 信じてぇぇ!」


私は身をよじった。  


屈辱的だ。


こんな風に拘束され、弄ばれるなんて。

 

騎士の家系に生まれた誇りが、こんな扱いを許すはずがない。

 

……なのに。  


恐怖と同時に、私の脳裏には奇妙な感覚が芽生えていた。


――楽だ。


そう、楽なのだ。

 

こうして拘束されていれば、明日の食事の心配をしなくていい。

 

重たい税金の計算をしなくていい。

 

ボケたお爺ちゃんの介護もしなくていい。

 

今この瞬間、私はただの「無力な肉体」として、この絶対的な強者に支配されている。

 

その事実が、長年一人で全てを背負って張り詰めていた私に、麻薬のような安らぎを与えていた。


なに、これ……。頭が、とろとろする……


抵抗する力が、指先から抜けていく。  


仮面の男は、私の瞳の色が変わったことを見逃さなかったらしい。


「……ほう。素質(才能)があるな」


男は満足げに頷いた。

 

「いい子だ。君には、あとで特別な首輪をあげよう」


男は私の太腿の内側、きわどい部分に指を這わせる。

 

そこには、魔力を流すための「経絡(けいらく)」が集中している急所だ。


「これより、君の魔力回路に私の魔力を刻み込む。少し熱いぞ」


「ま、まって……そんなことしたら……あぁっ!」


ドクン、と熱いものが流れ込んでくる。

 

私の魔力が、男の魔力によって上書きされ、乱暴に馴染まされていく感覚。

 

それは、魂のレベルでのマーキング行為。


「あ……あっ、あぁ……!」


私の喉から、我慢できない嬌声が漏れる。

 

貧乏生活で擦り切れていた身体が、男の巧みな指使いと魔力の奔流によって、強制的に「女」として開発されていく。


「くく……。これほどの緻密な魔力回路とはな。いじりがいがある」


男は楽しげに、さらに指を進める。

 

くびれた腰、浮き出た肋骨、そして早鐘を打つ心臓の上へ。

 

革手袋の擦れる「キュッ」という音が、淫靡に鼓膜を揺らす。


「か、身体が……熱い……助け、て……」


私は涙目で懇願した。  


だが、心が、拒絶よりも期待してしまっている。

 

幼い頃から、一人で強くあれと言われ続けてきた。

 

そんな私にとって、抗うことを許されず、ただ「されるがまま」に快楽を与えられるこの状況は、暴力的なまでの救済だった。


あたま、おかしくなる……。悔しいのに、気持ちいい……っ。


男は私の耳元に顔を寄せた。


仮面の隙間から漏れる熱い吐息が、耳殻(じかく)を撫でる。


「や、やめて……」


「本当に素直な身体だ。言葉では拒んでも、下の口ほどお喋りらしい」


「ちが、違います、わたしは……っ」


「嘘をつくな。ほら、こんなに期待して震えている」


男の手が、私の秘所――そのギリギリの場所を、手のひら全体で圧迫した。


「んぎぃぃぃぃぃッ!!」


脳髄が沸騰するような衝撃。

 

私の腰が勝手に跳ね上がり、拘束具がガチャンガチャンと悲鳴を上げる。


「ここが欲しいのか? それとも、もっと奥か?」


男はじらす。


与えられる快感と、焦らされる苦痛。


その落差が、私の理性を粉々に砕いていく。


「あ……あぁ……ほしい、です……っ。もっと、触って……!」


ついに、私は陥落した。

 

プライドも羞恥心もかなぐり捨て、本能のままに快楽を乞う。

 

そのあられもない姿を見て、男は満足げに頷いた。


「よろしい。ご褒美に、私の『特濃の魔力』を注いであげよう」


男が手袋を口で噛んで外す。  


露わになった白く華奢な指が、私の下腹部に押し当てられた。


「受け入れろ。私の全てを」


ドクンッ!!


私の中へ、濁流のような魔力が流れ込んでくる。  


それは男の支配欲そのものだった。


私の魔力回路が、男の色に塗り替えられ、染め上げられていく。

 

内側から焼かれるような、致死量の快楽。


「あ、あ゛あぁぁぁぁぁッーーー!!」


私は弓なりに背中を反らし、白目を剥いて絶叫した。

 

視界が真っ白に弾け飛ぶ。


指先が痙攣し、足の指が丸まる。

 

魂の芯までトロトロに溶かされ、私は深い深い闇の底へと堕ちていった。


――プツン。


意識が途切れる寸前。

 

薄れゆく聴覚が、誰かの声を拾った。


「……ふふ。可愛い顔でイっちゃって。合格よ、アリア」


それは、酷く冷たく、それでいて愛おしさに満ちた、女の声だった。

次回予告 :「条件を提示します。契約期間は学園卒業までの三年間。報酬として……」私に突きつけられた、破格の契約書。「よしっ! これで私も王立学園の生徒……!」「勘違いしないでくださいね? 貴女はお客様ではない。高額で買い取られた『犬』なのです」「え?」

次回、「ドSメイド・ローズマリーの命令「聞きなさい、駄犬」


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