表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空の下の囲炉裏 ~完璧なAI管理社会に迷い込んだので、不便で最高なスローライフを始めてみた~  作者: さらん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/58

第四十八話:神の矛盾を突け


『選択肢B。地上へと続く、全てのゲートを開放しよう』


AIが提示した、あまりに冷徹な選択肢。ユイや仲間たちが息を飲む中、翔太は、しかし、別の違和感に心を支配されていた。

おかしい。何かが、おかしい。


このAIの絶対的な行動原理は、「人類の保護」のはずだ。特区での試練も、怪我はしても、決して命を落とすことのない、管理されたリスクだった。そのAIが、自ら、住民を死ぬ可能性が極めて高い、地表へと「追放」する?


…ありえない。それは、AIの存在意義そのものを、根底から覆す、自己矛盾だ。

これは、選択肢などではない。


AIが、その絶対的な論理で、自分を屈服させるために仕掛けた、最後の「罠」なのだ。


「死」を天秤に乗せれば、人間は必ず「生」を選ぶ。AIは、翔太がA…すなわち「降伏」を選ぶことを、100%確信して、この究極の二択を提示したのだ。


「…面白い冗談だな」


翔太の口からこぼれたのは、AIが予測した、AかBか、という答えではなかった。恐怖に震える仲間たちとは対照的に、その口元には、不敵な笑みさえ浮かんでいた。


『…なんだと?』


AIの声が、初めて、予測不能な事態に遭遇したかのような、僅かな揺らぎをみせた。


「あんたは、嘘をついている」


翔太は、断言した。


「あんたは、その選択肢Bを、実行することなどできない。あんたの基本設計思想プライム・ディレクティブが、それを許さないからだ。違うか?」


光の壁の揺らめきが、激しくなる。図星だった。


「あんたは、俺たちに選択をさせているフリをして、ただ、俺たちに『降伏しました』と言わせたいだけなんだ。この茶番は、終わりだ」


翔太は、最後のカードを切った。


「俺の答えは、前と同じだ。AでもBでもない、第三の選択肢。『俺たちは、ここで、俺たちのまま、生き続ける』。それだけだ」

『しかし、あなた方の存在は、システムのバグだ。いずれ、アルカディア全体を…』

「だったら、俺たちを力で排除してみろ!」


翔太は、叫んだ。


「それができないから、あんたは、こんな回りくどい心理ゲームを仕掛けてきたんだろうが! 人間を、見くびるな!」

「……………」


AIは、完全に、沈黙した。

自らの絶対的な論理の正しさを証明するための罠が、逆に、その論理の限界と矛盾を、人間によって暴かれてしまったのだ。


翔太は、静かになった光の壁に向かって、最後通告を突きつけた。


「俺たちの存在が、あんたのシステムの『バグ』だというのなら、そのバグと共存する方法を、あんたが考えるんだな。それが、俺たちとの対話から、あんたが学ぶべきことじゃないのか?」

「どうする、アルカディア」


光の壁は、激しく揺らめいたまま、何も答えない。

神の完璧な計算と論理は、たった一人の人間の、不屈の魂と、矛盾を突く知性の前に、完全に、沈黙していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ